動画編集者が撮影まで受けるときの型|リモート収録の座組みと事故の潰し方
編集をやっていると、そのうち撮影まで頼まれることがあります。僕も何度か受けてきました。やってみて分かったのは、現場で気にすべきなのは、きれいに撮れているかより、あとで直せる形になっているかだということなんですよ。きれいさは編集である程度どうにかなりますが、録れていない音や切れた録画はどうにもなりません。
先に断っておくと、この記事は「依頼が来てから読む記事」です。編集者が最初から撮影機材を揃える必要はないと僕は考えていて、そのことは動画編集に必要なPCスペックと機材にも書いています。ここで扱うのは、編集を続けているうちに撮影まで頼まれたときに、何を用意して、現場で何と言えばいいのかという話です。
この記事でわかること
- リモート収録の座組み(Zoomの映像を使わない理由と、その代わりに何で撮るか)
- 出演者に指定する4項目と、任せてよいところ
- 本番前に自分の環境を確認しておくこと
- 録画が途中で止まっていたときに、何が残っているか
- 撮り直す場面と、撮り直さずに編集で回収する場面の切り分け
- 撮影の段階で、編集後のことまで考えておく項目
- 出演者との関係を壊さないために、収録中に言っておくこと
- 現地に撮影に行く場合の、時間帯と機材の考え方
- 収録が終わったあと、その場で確認しておくこと
Zoomの映像は、素材には使わない
リモートで対談やインタビューを撮るとき、いちばん簡単なのはZoomの録画をそのまま使うことです。ただ僕は、Zoomの録画を素材には使いません。画質が落ちるからです。
代わりにこうします。出演者それぞれが自分のスマホで自分を撮る。会話はZoomとイヤホンで行う。Zoomの録画はバックアップとしてだけ回しておく。
2023年7月の受講生対談でも、この形で撮りました。iPhoneのほうが画質がいいので、動画にしたときにきれいなんですよね。編集担当への連絡でも、Zoomの画面共有で流した動画は画質が落ちるから、実素材を直接差し込むように伝えています。
この座組みには、もうひとつ効能があります。相手の環境に依存しないことです。回線の状態でZoomの映像が乱れても、手元のスマホ側には影響しません。
指定するのは4つ。あとは相手に任せる
出演者に細かい指示を出しても、そのとおりに守ってもらうのは難しいと感じています。守れる数まで減らします。2024年1月の収録で実際に言っていたのは、この4つでした。
「胸から上が映っていて、顔が画面の真ん中に映る状況であれば、どんな背景とかに変なものを映っていなければ、全然基本は大丈夫なんですけど」。ここまでが画の指定です。これより細かいところは相手に任せていて、2023年4月の収録では「ご自身のいい感じの画角で、そこはお任せしますので」と伝えています。
| 指定 | 実際に言っていること | なぜそこを言うか |
|---|---|---|
| 胸から上が映る | 「胸から上が映っていて」 | 引きすぎると表情が読めない |
| 顔が画面の真ん中 | 「顔が画面の真ん中に映る状況であれば」 | 編集でトリミングする余地が残る |
| 背景に余計なものがない | 「どんな背景とかに変なものを映っていなければ」 | あとで隠すのは手間がかかる |
| 音声はイヤホン | 「もし可能であればイヤホンとかで、僕の声を聞く状況にしていただくとありがたいです」 | PCから出る音を、撮影しているスマホが拾ってしまう |
イヤホンの理由は、本人の言い方だとこうです。「パソコンから聞いちゃうと、撮影されてるスマートフォンの方にも音声が入っちゃって、ちょっとあれなんで」。
相手がイヤホンをつけてもZoomの音が出ないことがあります。そのときは「左下のマイクのアイコンの下に小さい三角ボタンを押していただくと、マイクスピーカー変えれるので、そこで設定変更いただけますか」と案内します。ここで詰まると収録が始まらないので、手順を固定しておくと楽です。
ちなみに、この確認をしていても、僕自身が忘れたことがあります。2023年10月の対談では、収録を始めてから「しかも僕も忘れてました。僕もイヤホン忘れて今気づいた」と言っています。決めていても抜けるので、始める前のチェックにしておくのが安全です。
音まわりをもう少し詰めたい場合は動画編集の音声処理とBGMの選び方も参考になります。
本番の前に、自分の環境を実測する
2023年12月に、自分で録画テストをした記録が残っています。資料のページ送りや画面の拡大も同じタイミングで試しているので、配信のリハーサルだったと思います。AirPods Pro、パソコンの内蔵マイク、iPhoneのマイク。この3つをテスト中に切り替えて、それぞれで録っています。
そのとき外を電車が通っていて、環境ノイズが乗る状態も一緒に録れています。こういうものは、本番で気づいても遅いんですよね。1分の録画を2本撮るだけなので、やっておくと安心して臨めます。
録画が途中で止まっていたときに、何が残っているか
2023年4月のリモート収録で、出演者のiPhoneが14分でストレージ切れを起こしていました。気づいたのは収録が終わったあとです。「はい、止めてもらって大丈夫です。録画を」と言って解散しかけたところで、相手から「あ、やばい。すみません、申し訳ないです」「途中でちょっとストレージで、途中までしか撮れてなくてですね」と申告がありました。
それでも撮り直しにはなりませんでした。Zoomの録画を回していたからです。「ズームの録画してるんで、後半はズームの録画使えます」と伝えて、その回はそのまま終わっています。画質が落ちる区間はできますが、集まり直してもらう必要はありません。編集では、その区間に事情を短くテロップで入れる、という方針で処理する話になりました。
Zoomの録画を素材に使わないと決めていても、回してはおく。これが保険になります。そして、これは次の項目にもつながる話です。収録が終わった直後に、相手の手元のファイルを確認していれば、その場で気づけました。
撮り直す場面と、撮り直さない場面
現場で判断が要るのは、止めるかどうかです。僕の切り分けはこうです。
| 状況 | どうするか |
|---|---|
| 1本目が長すぎた/話の構造が崩れた | 撮り直す。ただし「一旦ちょっとこれをリハーサルとして、もう一回撮り直します」と言って、相手の負担を軽くする |
| 質問の順番を飛ばした | 撮り直さない。「後で順番を編集で入れ替えます」と伝えてそのまま進む |
| 言い直しが起きた | 止めない。内容がまとまった時点で「今だいぶ言うことをまとまったと思うので、それをいい感じでもう一回お願いします」と言って、使えるテイクを作る |
| 名前を名乗り忘れた | あとから単独で撮る。「今の勝手に編集で組み替えますね」と伝える |
2023年4月の収録では、1本目が20分になって回答も長くなりました。素材尺を最初は10分、最終的に15分くらいに収めたかったので、全部撮り直しています。そのとき言ったのが「一旦ちょっとこれをリハーサルとして、もう一回撮り直します」でした。同じ場面に「でも1回目はリハーサルだと思うんで」というやり取りも残っています。撮り直しでは、前置きや周辺エピソードを削って、質問に対してそれだけ答えてもらう形に変えています。
逆に、順番を飛ばしたときは止めません。生放送ではないので、あとで並べ替えればいいだけです。相手にも「後で順番を編集で入れ替えます」と言っておくと、その場の空気が乱れません。
収録中に、編集後のことまで考えておく
2023年10月の受講生対談で、締めのメッセージを促すときに自分で「最後に」と言ってしまい、その場で言い直しました。しかもそのあと、もう一度「最後に」と言ってしまって、二度言い直しています。視聴者に終わりを予告すると、そこで離脱されるからです。
「最後にごめんなさい、最後にっていうと視聴維持率が下がっちゃうので、もう一回言いますね」。こう言って撮り直しています。撮影の段階で編集後の指標まで意識しておくと、あとで直せない失敗が減ります。
サムネイル用の人物画像も、撮影後に確認しておく項目です。動画から切り出すこともできますが、本人がビジネス用に撮った写真を持っているなら、そちらのほうがきれいです。指定があるかどうかを聞いて、あれば送ってもらう。素材の受け渡し方法まで決めておくと、あとのやり取りが1往復減ります。
出演者との関係を壊さないために言うこと
撮影を受けると、編集だけのときには発生しない責任が乗ります。相手の顔と声を預かるからです。
2026年1月の収録では、終わりぎわに企画の意図を包み隠さず伝えたうえで、「悪いようには絶対編集しないので」とその場で言っています。顔出しの可否や、モザイクをかけるかどうかも収録中に確認しました。
ちなみにこの回は、こちらの想定のほうが外れました。仕事もコミュニケーションも問題がなくて、良い誤算だったんです。見立てが当たらなかったのは、こちら側の見る目の問題でした。そういうことも含めて、収録前に正直に話しておくほうが後で困りません。
もうひとつ、第三者が映り込む場合です。2023年7月のドキュメンタリー収録では、出演者が以前に別のところで作った制作物を二人で見る場面がありました。その場で決めたのは、その映像はそのまま映さず、それらしいイメージ映像に差し替えるということでした。特定されると角が立つからです。公開後の実物までは確認していませんが、収録の時点でこう決めています。比較の説得力は残しつつ、名指しの批判にはしない。ここは編集側の作法だと思っています。
現地に撮影に行く場合
ここから先は、依頼が来る前に自分から実績を作りに行くときの話です。案件として安定するのは撮影に行かない仕事のほうで、それは動画編集の企業案件の取り方に書いたとおりです。ここは、撮影の実績が手元にない時期に限った動き方だと思ってください。
会社員をやりながら副業で撮影実績を作っていた時期、僕が狙っていたのは土日に営業している業種でした。不動産やエステサロンのように顧客が一般消費者の業種は土日に開いているので、副業の時間と噛み合います。「オープン前の最初の30分」に「お伺いさせていただいて、iPhoneで撮ります」という入り方をしていました。
受けてもらうために出していた条件は、こうです。僕自身がその手の素材を持っていなかったので、撮らせてもらうこと自体がこちらの利益になるという言い方をしていました。「その素材になるというメリットをいただいてるわけなので」と説明して、制作費そのものは取りませんでした。そのうえで「交通費とほんとちょっとのお金だけいただいたら」と伝えていました。制作費を無償に寄せる代わりに、こちらは素材が手に入る。この形だから相手も受けやすくなります。
機材は、必要なときだけ借ります。一眼が要る撮影があるなら、ミラーレスを1日だけレンタルして撮り切る。経験とポートフォリオとノウハウが同時に手に入るので、それを持って2社目、3社目に広げていく設計です。
撮影まで巻き取ると、1社あたりの取引額は変わります。編集の周りで受けられる仕事の広げ方は動画編集で1社から売上を伸ばす方法にまとめています。
収録が終わったあとの流れ
素材が手元に揃ったら、そこから先は通常の編集案件と同じです。受注から納品までの工程は動画編集のワークフロー17工程に分解しているので、そちらを見てください。撮影が入ると、その前段に「座組みの設計」「機材と環境の確認」「出演者への事前連絡」が足されるイメージです。
ひとつだけ、撮影案件に固有の注意があります。素材が全部そろっているかを、その場で確認することです。スマホで撮った素材は出演者の手元にあるので、解散したあとに「録れていませんでした」と分かると、もう一度集まってもらうことになります。収録直後に、ファイルの長さだけでも見せてもらってください。
よくある質問
撮影の経験がなくても受けていいですか
リモートの対談やインタビューなら、上の座組みで成立します。現地に行く撮影は、一度誰かの現場を見てからのほうが安全です。ただ、いずれにしても撮影単体の仕事ではなく、編集を受けている相手から頼まれる形で入るのが自然だと思います。
機材は何を買えばいいですか
最初は買わなくていいです。リモート収録なら出演者のスマホと自分のPCで足ります。現地撮影で一眼が要るときは、1日レンタルで足ります。買うのは、同じ機材を繰り返し使う状況になってからで遅くありません。詳しくは動画編集に必要なPCスペックと機材に書いています。
出演者がイヤホンを持っていない場合はどうしますか
PCのスピーカーで音を出すと、撮影しているスマホに自分の声が回り込みます。有線でも構わないので用意してもらうか、それが難しければ、Zoomの録画を主素材に切り替える判断もあります。画質は落ちますが、音が二重になるより扱いやすいです。
撮り直しをお願いするのは失礼になりませんか
「一旦ちょっとこれをリハーサルとして、もう一回撮り直します」と先に言っておくと、ほとんどの場合は問題になりません。むしろ、使えない素材のまま持ち帰って、あとで「もう一度お願いします」と連絡するほうが負担をかけます。
収録した内容を、そのまま公開してもいいですか
出演者の許可を取ってください。顔出しの可否、モザイクの要否、話した内容のうち出せない部分。ここは収録中か直後に確認します。第三者や他社が特定される映像が入っている場合は、イメージ映像に差し替えるなどの処理が要ります。
まとめ
撮影を受けるときにやることは、突き詰めると2つです。編集で直せる形に素材を収めることと、出演者に余計な負担をかけないこと。
Zoomの映像は使わずスマホで撮る。イヤホンだけは必ず確認する。事故に備えてZoomの録画は回しておく。長すぎたら「一旦ちょっとこれをリハーサルとして、もう一回撮り直します」と言って撮り直し、順番が飛んだら「編集で入れ替えます」と言って進む。言い直しは止めずに、まとまった瞬間に回収する。
これを毎回同じ手順でやっておくと、現場で考えることがほとんどなくなります。
免責事項
本記事は、株式会社ブイストが運営する動画編集スクール「ブイプロ」の代表・山田一真が実際に行った撮影・収録の記録(副業期を含む2019年ごろ〜2026年1月)をもとに構成しています。記載した進め方は当時の案件での判断であり、特定の収入・成果・再生数の向上を保証するものではありません。適切な進め方は、案件の内容・出演者・撮影環境によって異なります。また、肖像権や第三者の映り込みに関する記載は一般的な注意点の整理であり、個別案件の適法性を判断するものではありません。実際の判断にあたっては、出演者・権利者の同意取得および専門家へのご相談をお願いいたします。
🎁特別なお知らせ🎁
僕は母の重い病気を救いたいと思い、動画編集を始めました。
編集の基礎スキルしかないまま現場に出て、運良く仕事が取れたものの、納期までに編集ができず、クライアントに迷惑をかけて疲弊しました。
クライアントにも迷惑をかけて、ブラックリスト入りしたこともあります。
僕と同じ経験をする人を減らして、現場で重宝される動画編集者を増やしたいと思い、現場で本当に役立つ発信を日々行なっています。
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P.S. 7年前の疲弊する前に欲しかった…
