動画編集の必要単価の逆算方法|限界単価から目標額までの差を埋める
この記事でわかること
- 目標額を単価で割る計算が、なぜ現実と合わない数字を出すのか
- 「今の実力で取れる限界単価」を先に置いてから逆算する順序
- 限界単価・月に回せる本数・目標額の3つで必要単価を出す手順
- 限界単価と必要単価に差があったときに、僕が次に考えていること
目標額を単価で割ると、たいてい無理な数字が出る
「月15万円ほしい」と決めたあと、多くの人は今の単価で割り算をします。1本3000円なら50本。1本5000円なら30本。数字は出ます。問題は、その本数を1か月で納品できるかどうかが計算に入っていないことです。
2023年10月に僕が受けた個別相談の話です。相談してくれた方は、当時1本1000円のカット案件を受けていました。ここで目標の15万円を割ると150本になります。30日で150本は、1日5本です。編集にかかる時間を考えれば、机上でしか成立しません。
割り算そのものは間違っていません。割る順番が逆なだけです。先に決めるべきは目標額ではなく、今の自分がどこまで取れるかという上限のほうです。
まず「今の実力で取れる限界単価」を置く
ブイプロの個別相談では、僕は目標の話に入る前にポートフォリオを見ます。そのうえで、営業をどれだけ頑張ったとして、今の技術のまま取れる単価の上限はいくらかを先に提示します。この相談で、僕はこう言いました。
「要はその 今の実力で取れる単価の最大限って 多分1本3000円ぐらいあると思います」
これは「3000円が取れる」という約束ではありません。営業の量を増やしても、提案の書き方を磨いても、編集の中身が今のままなら天井はこのあたり、という僕の見立てです。1000円で受けている人にとっては上振れの数字ですが、同時に、営業だけでは越えられない線でもあります。
もうひとつ、限界単価という言い方には前提があります。単価は自分が決めるものではなく、相手が払うと判断した額だという前提です。だから「1万円ほしい」と思っていても、出せる成果物が3000円の水準なら、提示額は通りません。限界単価は希望額ではなく、相手側から見た評価額に近い数字です。
この線を先に引くと、目標との距離が数字で見えます。感覚で「もっと頑張る」と言うのではなく、何倍足りないのかがわかる状態になります。月5万円までの分解は動画編集で月5万円を目指す6手順で書いています。
限界単価と目標額の差が、そのまま課題になる
先ほどの相談では、限界単価3000円を置いたうえで15万円を割りました。15万円÷3000円で50本。これを30日で納品する前提になりますが、その方が実際に月に編集できるのは10〜15本というのが、相談した時点での僕の見立てでした。50本と15本では届きません。
そこで割る向きを変えます。月に回せる本数のほうを固定して、15万円÷15本で1本1万円。つまり、その方が目標に届くために必要な単価は1万円だ、という数字が出ます。
ここで限界単価3000円と必要単価1万円が並びます。差は約3倍。相談の中では、この3倍をどう埋めるかへ話を進めました。「営業を頑張る」で埋まる差ではないことが、数字で確定した状態です。
逆算に使う数字は3つだけ
やることは複雑ではありません。使う数字は3つです。
| 数字 | 意味 | この相談での値(2023年10月時点) |
|---|---|---|
| 限界単価 | 今の実力のまま、営業を頑張って取れる上限 | 1本3000円 |
| 月に回せる本数 | 本業や生活の中で実際に納品できる数 | 10〜15本 |
| 目標額 | 月にいくら残したいか | 15万円 |
この3つが揃うと、必要単価は目標額÷本数で出ます。そして限界単価と必要単価を比べると、埋めるべき差が何倍なのかが出ます。順番を守ることが大事で、限界単価を最後に持ってくると「本数を増やせばいい」という結論に流れてしまうんですよね。
なお、限界単価は自己申告では出しにくい数字です。自分の作品は自分にとって見慣れているので、相場のどこに位置するのかがわかりません。ここだけは第三者に見てもらうか、実際に営業を送って返ってきた反応から推定するほうが精度が出ます。
3倍の差を「本数」で埋めようとしない
差が出たとき、最初に思いつくのは本数を増やすことです。1本3000円のまま50本やれば計算は合います。ただ、月に10〜15本という数字は、やる気ではなく使える時間から出ています。ここを2倍3倍にするのは、生活のほうを壊す方向の解決です。
もうひとつ、単価が同じまま本数だけ増えると、1本あたりにかけられる時間が減ります。品質が下がれば、次の単価はむしろ下がる方向に動きます。限界単価を押し上げるための時間が、納品作業に食われていくことになります。
だから僕はこの相談で、本数ではなく「3000円を3倍にするために何が要るか」へ話を戻しました。差の埋め方は、営業量ではなく提供する中身のほうにあるという整理です。何が要るかは人によって違い、構成の提案なのか、テロップやデザインの水準なのか、企画から入れるかどうかなのかは、ポートフォリオを見ないと決まりません。
ひとりで逆算するときの手順
個別相談がなくても、同じ順番で紙に書けます。
- 1. 月に回せる本数を先に数える。理想ではなく、直近1か月で実際に納品できた数、あるいは平日に確保できている作業時間から割り出す。
- 2. 目標額を月単位で決める。年収ではなく月の数字にする。手取りで考えると経費や税の分だけずれるので、売上ベースで置く。
- 3. 必要単価を出す。目標額÷本数。この数字が、今の生活のまま目標に届くための条件になる。
- 4. 限界単価を推定する。今のポートフォリオのまま提案して、通った実績のある最高額。まだ実績がなければ、返信が来た案件の提示額を上限とみなす。
- 5. 差を倍率で書く。「あと7000円」ではなく「3倍」と書く。倍率で見ると、営業量で埋まる差なのか、中身を変える必要がある差なのかが区別しやすくなります。
倍率が1.2倍程度なら、提案の書き方や交渉の一言で届く範囲かもしれません。3倍なら、受けている仕事の種類そのものを変える話になります。同じ「単価を上げたい」でも、やることが違ってきます。種類によって単価が変わる構造は動画編集の単価が人によって違う理由で書いています。
逆算した数字は、営業の判断にも使える
必要単価を出しておくと、案件を見たときの判断が速くなります。募集要項に単価が書いてある案件なら、その額が必要単価に対して何割なのかがすぐ出ます。必要単価の半分以下なら、受けても目標には近づかない案件だとわかります。
ただし、必要単価に届かない案件を全部切るという話ではありません。実績が薄いうちは、単価より先に「納品した」という事実が必要な時期があります。判断が変わるのは、その案件を何のために受けるかを自分で決められるかどうかです。実績のために受けるのか、売上のために受けるのかを分けておくと、安い案件が続いたときに理由が説明できます。
逆算をやっていないと、この区別がつきません。目の前の案件が高いか安いかを相場と比べるだけになり、自分の目標に対して足りているのかがわからないままになります。相場は他人の数字で、必要単価は自分の数字です。営業の場で持っておくべきなのは後者のほうです。その相場のほうは動画編集の収入はどれくらい?に実測の分布を出しています。
よくある質問
限界単価が思っていたより低くて落ち込みます
限界単価は今の実力の値札であって、この先の値札ではありません。むしろ低く出たほうが、埋めるべき差がはっきりします。この相談でも、僕は3000円という数字を結論ではなく「ここから3倍にするには何が要るか」という次の問いの入口として使いました。
月に回せる本数は、どこまで増やしていいですか
納期を守れて、修正対応の余地が残る範囲までです。本数を限界まで詰めると、限界単価を上げるための学習や営業の時間がなくなります。逆算の目的は今月の売上を最大化することではなく、単価が上がる状態に移ることなので、本数の枠は少し余らせるほうが動きやすくなります。
必要単価が相場よりかなり高く出てしまいました
その場合、目標額か期限のどちらかを動かすことになります。よくあるのは、月15万円を「半年後に15万円」と置き直して、今月の必要単価を下げるやり方です。数字が非現実的なまま走ると、達成できない月が続いて手が止まりやすくなります。
単価が上がれば本数は減らしていいのですか
計算上はそうなりますが、取引先を1社に絞ると、その1社の都合で収入が動きます。単価が上がった分をすぐ本数の削減に回さず、しばらくは複数の取引先を並行させておくほうが、単価交渉のときにも足元が固まります。
まとめ
目標額を今の単価で割ると、こなせない本数が出てきます。順番を変えて、まず今の実力で取れる限界単価を置き、月に回せる本数で目標額を割って必要単価を出す。この2つの数字を並べると、埋めるべき差が倍率で見えます。
2023年10月に僕が受けた個別相談では、限界単価1本3000円に対して必要単価1本1万円、差は約3倍という整理になりました。その差を本数で埋めようとすると生活が先に壊れるので、話は「3000円を3倍にするために何が要るか」へ移ります。
逆算は、目標を近づけるための計算ではありません。今どこにいて、何倍足りないのかを確定させるための計算です。差がはっきりすれば、次に手をつける場所も決まります。
免責事項
本記事は、株式会社ブイストが運営する動画編集スクール「ブイプロ」の代表である僕(山田一真)の講義と個別相談の内容をもとに書いています。記載した単価や本数は逆算の手順を示すための例であり、特定の収入・成果・案件獲得を保証するものではありません。到達できる金額はその人の実力と市場の状況によって異なります。
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