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動画デザインはセンスではない|研修で教える7分野の判断基準

公開日: 2026年9月1日 最終更新: 2026年9月12日 執筆: 山田一真(カズマル)|株式会社ブイスト代表
デザインは センスではない

はじめまして。この記事を書いた人です

山田一真(カズマル)動画編集スクール「ブイプロ」代表/株式会社ブイスト

  • 2019年12月、報酬500円の動画編集案件から個人で仕事を始める
  • 個人受注から法人・代理店の案件へ広げ、2022年に株式会社ブイストを設立
  • 2025年8月、同社の株式を株式会社エフ・コード(東証グロース・9211)へ譲渡。現在も福岡を拠点に運営を継続
  • 受講生から寄せられた成果報告 延べ555件・実人数380名を自社で集計し、内容を公開している

この記事を書ける理由:この記事の原理は、社内のクリエイティブ研修会で僕が実際に画面を止めて指摘している内容です。「なぜその色にしたのか」を説明できない状態から始めた人間として、センスの一語で片づけられてきた部分を分解し直しました。

この記事でわかること

  • 動画のデザインを「センス」ではなく、理由を言葉にできる原理として扱う考え方
  • 目的/情報量/フォント/色/レイアウト/言葉/音の7分野で、判断の基準がどこにあるのか
  • ダメな例と良い例を分ける線引き(真っ黒の境界線、情報の重複、強調の数、抽象度のそろえ方など)
  • 自分の制作物を原理に照らして点検するチェックリスト
  • 原理が万能な正解ではなく、ジャンルと媒体で最適解が変わる理由

動画編集スクール ブイプロ(運営:株式会社ブイスト)では、社内のクリエイティブフィードバック会議を「クリエイティブ研修会」としてそのまま受講生に公開しています。この記事は、そこで代表の僕(山田一真)や講師陣が実際に使っている判断基準を、分野別に整理し直したものです。心構えの話はしません。画面を見ながら「ここがダメで、こう直す」と言える粒度まで落とします。

動画デザインは「センス」ではなく「原理」で説明できる

デザインの相談でいちばん多い言葉が「センスがないので」です。でも現場でフィードバックが飛ぶとき、指摘されているのはセンスじゃありません。「なぜその色にしたのか」「なぜその文字サイズにしたのか」を説明できるかどうかです。僕はこれを、クリエイターの資産の話だと思っています。思考はクリエイターの心臓であり財産。ドラえもんがなぜ青いか、藤子・F・不二雄は語らないし、言語化もされていない。だから僕らが言語化する。

言語化が必要な理由は、現場の構造にあります。実務では「ここ直して」と言われますが、なぜ直すのかは教えてもらえません。理由を知らないまま指示だけを消化していくと、作業には慣れるのに判断が育たないんですよね。ブイプロではこれを「ロボット力」と呼んで、警告として扱っています。直してと言われたところを直すだけなら、実務力がついているように見えて、ただの教科書どおりのロボットです。

だから研修会で繰り返される問いは、技術の巧拙ではなく、この一言に集約されます。「自分が作った動画で10時間語れますか」。全カット・全テロップに意図を持てという要求で、これが作業者と職人を分ける線です。

「もう『基本的な編集ができます』っていうのは動画編集者として弱いです。カットやテロップ入れができるのは当たり前で、発言をそのままテロップにするだけだとすぐに淘汰されてしまいます」——これは僕が数年前から言い続けていることです。当たり前の作業と、判断のある仕事を分ける。原理はそのための道具です。

もう一つの前提が、デザインの役割の定義です。動画編集は装飾ではなく咀嚼である、という考え方。「赤ちゃんに固形物をそのまま食べさせる人はいない。相手が飲み込みやすい形に、差し替える・足す・引く」。派手にすることではなく、相手が飲み込める形にすることが僕らの仕事です。この定義が全原理の土台になります。詳細は伝わる編集とは何かで扱っています。

原理1|すべての起点は目的|アクションの重さ×情報量の法則

研修会で最初に確認するのは、配色でも書体でもありません。「そのデザインを使って人に何をしてほしいのか」です。求めるアクションが決まらなければ、情報を増やすべきか減らすべきかも決まらない。

僕はこれを買い物でたとえます。「うまい棒は脳死で買うが、1億5000万のマンションは調べ尽くすでしょう」。求めるアクションが重いほど、判断材料を細かく書く必要がある。逆に、瞬間的な反応だけを求める場面で情報を盛ると、判断が遅れて反応そのものが失われます。

媒体に当てはめると、次のように整理できます。僕が研修で明示しているのはサムネイルとセミナーバナーの2行で、他の行は同じ法則を他の場面に当てはめたものです。

用途 求めるアクション アクションの重さ 情報量の方針
サムネイル クリック 軽い(0.2秒の判断) 絞る。瞬発力を優先し、要素を減らす
セミナー・説明会バナー 2時間を空けて参加する決断 重い 細かく書く。日時・対象・得られるものまで明示
本編の説明テロップ(整理) 理解して見続ける 要点だけ。話し言葉をそのまま置かない
図解・比較画面(整理) 保存・共有・見返す 中〜重い 1画面で完結する情報量に整える

目的が決まったら、次はリサーチです。研修会ではデザインはリサーチで8割決まるという言い方をします。1枚のデザインとして良くても、載せる情報がなければ意味がない。ここで3つの勘違いが正されます。

  • ド派手が正義ではない:ギラギラしていないセミナー画像で過去最大の集客につながった事例がある
  • 綺麗でなくていい:短時間で作った簡素な画像で集客できたケースもある。「結果が出ることが正義」
  • 盛ってはいけない:サムネと中身が乖離すると離脱を招き、評価が下がり、おすすめに出にくくなる

3つ目は特に大事で、巧拙より先に内容との一致が問われます。サムネイル制作の手順はYouTubeサムネイルの作り方にまとめています。

原理2|情報量の原理|引き算・重複禁止・強調は1つ

目的の次に効くのが情報量です。前提はシンプルで、人が1秒に受け取れる情報量には上限がある。この上限を無視して要素を足すと、丁寧に作ったつもりの画面が、伝わらない画面になります。

研修会でいちばん厳しく指摘されるのが情報の重複です。タイトルと箇条書きに同じ文言が入っている画面について、僕はこう言っています。「タイトルと箇条書きで同じ文言を2回読ませるのは、2回分の時間で情報1個。100人見たら100人分の目の動きを奪っている」。単価が上がりにくい編集者に共通する、無自覚な癖です。

もう一つが強調は1つという原則。「100万」と「嫌でも行く」の両方が目立つ画面では、どちらも伝わりません。強調とは目立たせることではなく他を目立たせないことだと考えると、判断がぐっと楽になります。

引き算にもはっきりした言い方があります。「他のところも咀嚼してほしい、は編集者のエゴ」。画像はテロップより多くを語るので、視線を1点に集めるなら演者の顔を隠してでも画像を置く、という判断まで含みます。

逆に「足すべき」ケースもあります。分かる人には分かるけど分からない人には分からない画面には、タイトル・枠・「参考例」表記といった補助線を引く。前置きなく映像が流れると、編集ミスと誤認されるからです。図解のように「ここを撮ればいい」と分かるスクショポイントの設計も、意図的な足し算です。

よくある症状 なぜダメか 直し方
タイトルと本文に同じ文言 2回分の時間で情報が1個しか増えない 本文側を具体化するか、削る
強調色が画面に3つ以上 優先順位が消え、どれも読まれない 強調を1つに絞り、他をトーンダウン
聞き取れる話に全部テロップ 視覚が渋滞し、集中が切れる 聞けば分かる箇所は入れない
「それっぽい」画像を配置 意味を運ばず、面積だけ奪う 意味で選ぶ。ターゲットに近い人物・状況の画像に
抽象語をそのまま文字で表示 頭に絵が浮かばず素通りされる 概念をイメージ化する(例:「基礎編と奥義編」を分厚い本2冊の絵に)
いきなり別映像が始まる 編集ミスと誤認される タイトル・枠・「参考例」表記の補助線を引く

なお「テロップが多いほど良い」わけではありません。テロップは文字起こしではなく脳内の補助線である、というのがブイプロの定義です。詳細はテロップ設計の考え方で扱っています。

原理3|フォントの原理|明朝とゴシックは役割が違う

書体の選択は好みの問題として扱われがちですが、研修会では役割の違いとして教えています。明朝体は心情・本音を運び、ゴシック体は事実・説明を運ぶ。

理由も言語化できます。明朝は毛筆や短歌・俳句といった文脈で繰り返し目にしてきた書体で、その蓄積が無意識に「内面を語っている」という印象を作ります。だから演者が本音を漏らした瞬間に明朝が効く。逆に手順や数字の説明を明朝で置くと、事実が湿った印象になって読みにくくなります。

実務上の基本形は太ゴシック+濃淡の交互です。細いフォントや過剰な装飾は、それだけで初心者の制作物に見えます。一方で、金のベベル文字を1文字6レイヤーで組むような精度の高い装飾は、単価の根拠になり得るとも説明しています。問われるのは装飾の有無ではなくその装飾に目的があるかです。

書体・処理 与える印象 合う場面 注意点
明朝体 心情・本音・内省 感情が動く発言、告白、余韻の残る締め 手順・数値の説明には向かない
ゴシック体 事実・説明・断定 解説、比較、数値、手順 感情の機微は表現しにくい
太ゴシック+濃淡交互 読みやすさ・現場標準 本編テロップの基本形 濃淡の差が小さいと強弱が消える
細フォント 繊細・弱い 用途が限定される 本編テロップに使うと初心者感が出やすい
過剰な装飾(縁・影の重ねすぎ) にぎやか・散漫 目的がある場合のみ 目的なしの装飾は読みにくさだけが残る
ベベル等の作り込み装飾 重厚・特別感 タイトル、決めのカット 精度が甘いと逆効果。全編に使わない

関連して、切り抜き画像のレタッチにも原理があります。背景と馴染ませるためだけの作業ではなく、陰影の精密さが発信内容の重厚感として錯覚されるという話です。雑な切り抜きは、内容の雑さとして読まれます。

原理4|色の原理|「なんとなく」を根拠に置き換える

色について研修会で最初に言うのは、たった一行です。「なんとなく選ぶな。根拠で選べ」

代表的な根拠が赤です。赤は危険・苦言を意味します。信号機と血という、生活の中で刷り込まれた対応関係があるからです。だからポジティブな話に赤や赤黒のテロップを当てるのは原則NG。同じ赤でも彩度で意味が変わり、原色の赤はキッズ向けの印象が出るので、ビジネス系では落ち着いた赤を使い、ネガティブな内容には暗めの赤を当てます。

もう一つ頻出するのが真っ黒(#000)の境界線を使わないという指摘です。理由は目がチカチカするから。文字の縁取りや図形の線に純黒を使うとコントラストが立ちすぎて、視覚的な負荷になります。代替はグレー、または白のシャドウ。純黒の縁は「一番きれいに見える設定」ではありません。

背景と文字の関係では保護色の回避が基準です。背景色と文字色が近いと、読めるけれど疲れる画面になります。特定のサービスを語る場面では、そのサービスカラーに合わせる判断もあります(例:クラウドワークスの話題なら青)。色数はジャンルで基準が変わり、ビジネス系は絞る、エンタメ系はカラフルでよい、と使い分けます。

色の扱い 根拠 NGの例 OKの方向
赤=危険・苦言 信号と血による刷り込み おめでたい報告に赤黒テロップ 警告・注意・失敗談に当てる
赤の彩度 原色はキッズ向けの印象 ビジネス系動画に原色の赤 落ち着いた赤。ネガティブは暗めの赤
真っ黒(#000)の境界線 目がチカチカする 純黒の縁取り・純黒の枠線 グレー、または白のシャドウ
背景と文字の関係 保護色になると読解に負荷 濃紺背景に濃い青文字 明度差を確保する
ブランドの話題 色が意味を運ぶ 無関係な色で処理 サービスカラーに合わせる
色数 ジャンルで基準が変わる ビジネス系で色数が多すぎる ビジネス系は絞る/エンタメは可

原理5|レイアウトと視線の原理|画面のどこを見せるか

レイアウトの原理は「きれいに並べる」ではなく、視線をどこに導くかで判断します。

まず、そろえること自体に理由があります。カットとテロップの切り替わりを合わせて先端をそろえるのは、視覚変化を最大化し、統一感で理解を助け、1フレームのズレが生む無意識のストレスを排除し、リズムを作るため。研修会では「1フレームのズレで動画の質がガツッと下がる」と言っていて、死ぬほど多い指摘です。

ワイプの配置にも原理があります。右を見ている顔は画面の左に置くと、視線が画面内へ向かい、演者が画面の中身を見ているように見えます。逆にすると演者が画面外を見る構図になって、視線が散ります。

媒体固有の制約もあります。YouTubeのサムネイルは右下に動画尺の表示が重なるので、その位置に読ませたい文字を置かない。統一感の作り方にも手順があります。ゼロから設計せず、既に成立しているデザイン1枚の要素を移植するという方法です。そして世界観の統一は最優先。「スーパーマリオの世界に急に実写のヤクザが出てきたら世界観が終わる」「真面目なビジネス動画に突然ゆるふわなイラストが入るのは、マリオにシナモンを入れるようなもの」という言い方で共有しています。注意してほしいのは、演出の飽き対策としてデザインを変えるのはNGという点です。作り手が飽きることと、視聴者の世界観が壊れることは別問題ですよね。

項目 原理 判断基準
クリップの先端をそろえる 視覚変化の最大化・無意識のストレス排除 1フレームのズレもないか
視線の1点集約 1秒に受け取れる情報量には上限がある 今この瞬間、どこを見てほしいか言えるか
ワイプの目線 顔の向きの先に画面内容を置く 右向きの顔は左配置になっているか
サムネイル右下 動画尺表示と重なる 右下に読ませたい文字を置いていないか
統一感 既存デザイン1枚からの移植で作る 色・書体・角丸などの規則が全画面で同じか
世界観の統一 トンマナ崩れは対企業納品で致命傷 飽きたからという理由で崩していないか

原理6|言葉の原理|抽象度・伏線・ベネフィット

動画のデザインには、画面に載る言葉の設計も含まれます。第一に、並列に並べる語は抽象度をそろえる。研修会での例は「ルールと納期」です。納期はルールの一部なので、並列にすると論理が崩れます。僕がよく使う言い方は「果物とりんごが大好きです、と言ったら変でしょ」です。箇条書きを作ったら、各項目が同じ階層にあるか確認してください。

第二に、伏線は具体で回収する。「新たなステージ」といった言葉を繰り返しながら中身を定義しないのが典型的なNGです。「ビジネス系で解釈が分かれたらおかしい。ドラマじゃないんだから」。余韻を残す演出と、定義をサボることは違います。

第三に、事実にベネフィットを足す。「制作意図と工程を全部見せます」で止めず、「その結果あなたが自分の力で売れる動画を作れるようになります」まで書き切る、という基準です。

第四に、認知的不協和でギャップを作る。高いクオリティの動画を見せながら成果を語っても、驚きは生まれません。あえて情報を隠して期待とのズレを作ると、内容が届きやすくなります。ただしギャップは見せ方の設計であって、内容の誇張ではありません。ここを取り違えると、さっきの「盛ってはいけない」に真っ向からぶつかります。

第五に、テロップは意訳する。「〜という風に思いまして」は言い切りに直し、冗長な口語は削る。理由は、即座に理解させて集中を維持する・視覚のごちゃつきを減らす・音を出さずに見る人へ対応する・他媒体へ転用しやすくするの4点です。

ルール NGの例 OKの方向
並列の抽象度をそろえる 「ルールと納期」 同じ階層の語で並べる
伏線は具体で回収 「新たなステージ」を連呼して未定義 何が新しいのかを言葉で定義する
事実+ベネフィット 「工程を全部見せます」で終わり 「その結果どうなるか」まで書く
ギャップの設計 最初から全部見せて驚きゼロ あえて隠して落差を作る
誇張しない サムネと中身が乖離 中身に対して正確に言い切る
テロップは意訳 話し言葉をそのまま全文表示 言い切り・冗長語の削除

原理7|音のデザイン原理|効果音の高低とBGMのBPM

音は「デザイン」から外されがちですが、画面の印象を決める要素なので同じ枠組みで扱います。効果音には高低の理論があります。人間は低い音を、信頼・真剣・深刻な場面で繰り返し聞いてきました。だから130ページの資料のずっしり感を伝えたいなら、軽い効果音ではなく重低音の「ドシーン」を当てる。選ぶ軸は「場面に合うか」だけじゃなくて、その効果音でどういう印象を与えたいかです。

BGMはBPM(テンポ)で選ぶのが原理です。速いBPMはせかす感覚と上昇感を、遅いBPMはリラックスと安心を作ります。「場面に合う曲を検索して入れる脳死挿入ではなく、視聴者の呼吸と心拍数を操作し、感情曲線を操るために入れる」。音量にも目安がありますが、数値で済ませないという但し書きがセットです。

要素 原理 現場での目安
音声 画面全体の基準となるレベル −6〜0dB
効果音(SE) 低音=信頼・真剣・深刻/高音=軽快 −15〜−20dB
BGM BPMで感情曲線を操作する −30〜−25dB
強調テロップ+SE 視覚と聴覚をセットで設計する 組み合わせをパターン化して再利用
見直し 感覚を変えて2回確認する 音あり再生と音なし再生の両方で確認

原理8|自分の制作物を点検する|原理別チェックリスト

ここまでの原理を、書き出し直前に使える形にまとめます。なお「点検の質問」は自己点検しやすいよう本記事で言い換えたものです。特に「音なしで通しで見る」は、画面だけで意味が通っているかが露骨に分かるので、だまされたと思って一度やってみてください。

分野 点検の質問 NGのサイン
目的 この画面で相手に何をしてほしいか、一文で言えるか 「かっこよくしたかった」しか出てこない
情報量 アクションの重さに情報量が見合っているか サムネに要素が5つ以上ある
重複 同じ文言を2回読ませていないか タイトルと箇条書きが同じ言葉
強調 一番目立つものが1つに絞れているか 強調色が3色以上ある
フォント 心情なのか事実なのかで書体を選び分けたか 全部同じ書体、または理由なく明朝
その色を選んだ根拠を言えるか 「なんとなく良さそうだった」
境界線 純黒(#000)を縁や線に使っていないか 見ていると目が疲れる
レイアウト 視線を1点に集約できているか どこを見ればいいか迷う
そろえ カットとテロップの先端が1フレームもズレていないか 切り替わりが微妙に気持ち悪い
世界観 全画面のトンマナが一貫しているか 途中で急に雰囲気が変わる
言葉 並列の抽象度がそろい、伏線を定義できているか 「果物とりんご」型の並びがある
効果音とBGMを、与えたい印象から選んだか 「場面に合う曲」を検索して入れただけ

この点検の根底には、一つの倫理があります。「無料の動画でも、視聴者は時間という対価を払っている。実質お金を払って見てもらっていると思った方がいい」。デザインの原理は見栄えの話ではなく、預かった時間を無駄にしないための手続きです。

それと、デザインの言語化は学習上の悩みの中心にもあります。ブイプロが受講生から集めた悩みの記述はのべ469件(回答者262名、複数記述を含む)で、内訳は次のとおりです。割合は小数第1位を四捨五入しています。

悩みの分類 件数 割合
スキル習得の難しさ 82件 17%
自信がない 80件 17%
成長の停滞 79件 17%
収入・単価 43件 9%
時間の確保 41件 9%
営業への不安 40件 9%
その他 104件 22%
合計 469件 100%

上位3つ(スキル習得82件・自信80件・停滞79件)の合計は241件で、全体の51%を占めます。別々の悩みに見えますが、話を聞いていくと同じ場所に行き着きます。自分の判断に理由がないから、良し悪しを自分で決められないという状態です。理由がなければ、直されるたびに自信が削られるし、修正の数が増えても実力が積み上がった実感を持てない。しんどいですよね。

原理は「正解」ではない|ジャンルと媒体で最適解は変わる

ここまで原理として書いてきましたが、これらは絶対的な正解ではありません。研修会でも、原理を暗記の対象にすることははっきり否定しています。第三者の声を色変えで表現する手法についても、僕が毎回釘を刺しているのは「第三者=色変え、と暗記するな。案件ごとに思考しろ」という一言です。

実際、同じ原理でも適用結果はジャンルで変わります。色数を絞るのはビジネス系の基準で、エンタメ系はカラフルで構いません。情報を絞るのはサムネイルの基準で、重い決断を求めるバナーではむしろ増やします。最終的には、案件ごとのマニュアルとチャンネルごとのルールが優先されます。

基準として残るのは一つだけです。「なんでここでこの演出?」と聞かれたときに答えられる根拠を持っているか。原理はその根拠を組み立てる材料であって、判断を代行してくれるものではありません。原理をそのまま当てはめて満足した瞬間に、さっきの「ロボット力」に戻ります。

なお本記事は、社内のクリエイティブ研修会および技術講義で実際に指導している項目にもとづいて構成しています。原理そのものは追加していませんが、次の3点は本記事で補ったものです。(1)用途別の表のうち、サムネイルとセミナーバナー以外の行は同じ法則を他の場面に当てはめた整理です。(2)チェックリストの「点検の質問」「NGのサイン」は、原理を自己点検できる問いの形に言い換えたものです。(3)各原理を7分野に振り分けた分類は本記事で行ったものです。

よくある質問

Q. デザインのセンスがありません。原理を学べば形になりますか?

センスという言葉で片づけられていた部分の多くは、判断の根拠が言語化されていない状態です。原理を持てば「なぜこうしたのか」を説明でき、直された理由も理解できます。ただし原理を知ることと再現できることは別で、上達の速度や到達点には個人差があります。

Q. 真っ黒(#000)の境界線は絶対に使ってはいけないのですか?

原則として避けるという指導です。理由は目がチカチカするからで、代替はグレーまたは白のシャドウです。ただし意図してコントラストを立てたい表現もあり得ます。大事なのは、純黒を「初期設定だから」使っていないかどうかです。

Q. フルテロップの案件でも、テロップを減らしていいのですか?

案件のマニュアルが最優先です。フルテロップが要件なら従います。要件が定まっていない場面では「聞き取れる箇所にテロップは要らない」という原理が適用されます。

Q. 原理を身につければ単価は上がりますか?

単価は市場・クライアント・営業活動など複数の要因で決まるため、原理の習得だけで収入が上がるとは言えません。ただし現場では、判断の理由を説明できる編集者は任される仕事の幅が変わりやすいという傾向が共有されています。結果には個人差があります。

Q. どこから練習すればいいですか?

過去に作った動画を1本開いて、この記事のチェックリストで点検するところからをおすすめします。特に「情報の重複」と「強調は1つ」は、知った直後から自分の制作物で見つけられる項目です。音を切って通しで見る点検も有効です。

Q. AIでデザインを作る場合も、原理は必要ですか?

必要です。生成物の良し悪しを判断して、どこを直すか決める工程は残るからです。ブイプロでも、作業はAIに・思考は人間に、という役割分担で整理しています。原理を持たないままAIの出力をそのまま使うと、判断の言語化という一番価値のある部分が抜け落ちます。

原理は読むだけでは定着しません。自分の制作物に他者の目が入って、なぜダメなのかを言葉で説明されて、はじめて次から自分で判断できるようになります。動画編集スクール ブイプロでは、社内のクリエイティブフィードバックをそのまま教材化した研修会形式の指導を行っています。僕(山田一真)も講師陣と一緒に、画面を見ながら理由まで言葉にしています。

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免責事項:本記事は、株式会社ブイストが運営する動画編集スクール ブイプロの社内研修・技術講義での指導内容にもとづく情報提供を目的としています。記載した原理は唯一の正解ではなく、ジャンル・媒体・クライアントの指定によって最適解は変わります。掲載データは自社が受講生から取得したアンケートの実測値であり、業界全体を代表するものではありません。学習の成果や収入には個人差があり、特定の結果をお約束するものではありません。実務では各案件のマニュアルおよびクライアントの指定を優先してください。

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