動画編集の要約力の鍛え方|13文字テロップ試験に見る単価の分かれ目
この記事でわかること
- ある動画編集会社のテスト案件で出題された「13文字以内のテロップ」課題の中身
- 編集ソフトの操作ではなく、要約力と選定理由が問われていたと僕が考える理由
- 文字起こしとテロップの違いを、作業手順のレベルで分けて考える方法
- 一文を13文字に落とすまでの具体的な手順と、判断がぶれたときの優先順位
- 要約力を一人で鍛えるための練習メニューと、その限界
13文字のテロップ試験は、編集ソフトを一度も触らない試験だった
2023年8月に行ったブイプロの営業コンサルの初回で、受講生の近藤さんが受けたテスト案件の内容を聞きました。動画編集の会社に応募すると出される選考課題の話です。内容を聞いて、その場にいた全員の理解が少し変わったのを覚えています。
出題されたのは、こういうものでした。文章が渡され、そこに傍線が引かれている。その指定された箇所から、13文字以内で的確なテロップを作る。さらに、なぜその言葉を選んだのか、理由を書いてPDFで提出する。
ここで注目してほしいのは、この課題に含まれていないものです。カット編集の速さも、テロップのデザインも、エフェクトの引き出しの多さも、Premiere Proのショートカットの習熟度も、一切問われていません。渡されるのは文章で、返すのは13文字と、その理由の説明文です。編集ソフトを一度も起動せずに終わる選考課題なんですよね。
つまり出題側は、応募者の手の速さではなく、頭の中で何が起きているかを見にきています。傍線が引かれた範囲の中で、どこが幹で、どこが枝葉なのか。それを判断できる人かどうかを、13文字という枠で測っているわけです。テロップそのものの作り方は動画編集のテロップの作り方で書いています。
「上位5%」という評価は、何を指した言葉か
この話を受けて、僕はその会社のテスト案件の難しさについてこう言いました。
「まずアルゴメトリー行っておいでって言ってた時期もあったぐらいで」
「受かってるのは本当にもう文字通り上位5%に入ってると言ってもおかしくない」
ここは誤解のないように書いておきます。この「上位5%」は、2023年8月時点での僕の体感としての評価で、その会社が合格率を公表した数字ではありません。応募者数や合格者数の実測データにもとづく割合ではないですし、この試験に受かれば単価が上がるという保証を意味するものでもありません。
それでも、この評価に意味があると僕が考えている理由は、難易度の高さそのものではなく、何が難しいのかにあります。編集技術の試験で上位5%に入るのが難しい、という話ではありません。文章を読んで13文字に落とす作業で、そこまで差がつくという話です。多くの応募者が、ソフトの操作は問題なくできる状態で、この課題に落ちている可能性が高いと僕は見ています。
文字起こしと要約は、名前が似ているだけの別作業
この課題の話を受けて、僕はこう続けました。
「基礎的な技術の方だけだと本当文字起こしだけになっちゃう人が多い」
この言葉で言いたかったのは、テロップという工程の中に、性質のまったく違う二つの作業が同居しているということです。
一つは転記です。話した言葉を、そのまま文字にして画面に置く。ここで必要なのは正確さと速さで、誤字がなく、音とタイミングが合っていればいいです。AIの文字起こしが最も強い領域でもあります。
もう一つが要約です。話した内容のうち、どれを画面に出し、どれを出さないかを決める。こちらは正確さでは測れません。捨てる判断が入るからです。13文字という枠は、この判断を強制的に発生させるためにあります。40文字の発言を13文字にするには、27文字ぶんを捨てなければなりません。何を捨てたかで、その人の理解度が全部出ます。
ここで一つ、誤解されやすい対比を先に否定しておきます。「文字起こし的なテロップが悪い」という話ではありません。全文テロップを前提とする案件はいくらでもありますし、その場合に勝手に情報を削るのは指示違反になります。問題は、全文を載せる作業しかできない状態のまま、要約が必要な案件に出会ったときに、何をすればいいかわからなくなることです。転記しかできない人と、転記も要約もできる人がいて、後者のほうが任される範囲が広い、という順序で考えてほしいです。この「伝わるかどうか」の判断基準は伝わる動画編集とはで言語化しています。
一文を13文字に落とすまでの手順
実際に13文字に落とす作業は、センスの問題として片づけられがちですが、手順に分解できます。ブイプロで僕が教えている考え方を、この課題の形に合わせて整理すると、次の順番になります。
- 1. 傍線部を一文の主張に言い換える。まず文字数を無視して、「要するに何を言っているか」を一文で書く。ここで長くなっても構いません。
- 2. 主語と述語だけを残す。修飾語、接続詞、言いよどみ、「本当に」「やっぱり」のような強調語をすべて外す。この時点で半分以下になることが多いです。
- 3. 数字と固有名詞を最優先で残す。「3年で」「福岡で」のような具体語は、削ると情報が戻りません。抽象語は文脈で補えますが、具体語は補えません。
- 4. 話し手が力を入れた語を残す。音声を聞ける案件なら、声が大きくなった箇所、間が空いた直後の言葉を優先します。話し手が強調した語を削ると、映像と文字がずれます。
- 5. 画面と音声の重複を外す。すでに映像に映っているもの、直前のテロップに出ている語は、繰り返す必要がありません。
この5段階を通すと、たいていの発言は13文字前後まで落ちます。判断に迷ったときの優先順位は、具体語 > 動詞 > 形容詞 > 接続詞、の順で残すと決めておくと、作業がぶれにくくなります。
| 元の発言 | 転記のテロップ | 13文字以内の要約 |
| 「まあ、やっぱり最初の3か月は本当にきつくて、正直やめようかなと何回も思いました」 | まあ、やっぱり最初の3か月は本当にきつくて | 最初の3か月が一番きつい |
| 「結局のところ、営業をやってる人とやってない人で、差がついてるだけなんですよね」 | 結局のところ、営業をやってる人とやってない人で | 差は営業の有無で決まる |
右の列は、左の列より情報量が少ないです。ですが視聴者が受け取る主張は、右のほうが速く届きます。この差を意図して作れるかどうかが、課題で見られている部分だと僕は考えています。
提出物に「理由」が含まれていた意味
この課題でもう一つ重要なのは、13文字だけでなく、なぜその言葉を選んだかの説明をPDFで提出させている点です。答えだけでなく、答えの出し方を見にきているんですよね。
理由を書かせると、二つのことがわかります。一つは再現性です。たまたま良いテロップが1本作れた人と、毎回同じ基準で作れる人は、成果物だけでは見分けがつきません。理由を言語化させると、基準を持っている人だけが同じ説明を繰り返せます。
もう一つは、修正対応のコストです。理由を説明できる編集者は、クライアントから「ここは違う」と言われたときに、どの判断を変えればいいかを特定できます。理由を持っていない編集者は、全部作り直すか、勘で並べ替えるしかありません。発注側から見ると、この差は納期とやり取りの回数に直結します。
実務でも同じことが言えます。納品時に「この箇所は、視聴者が離脱しやすい導入部なので、結論を先に出しました」と一行添えられる人は、次の依頼で相談される側に回りやすいです。逆に、指示どおりに作っただけの納品を続けていると、判断はすべて発注側に残り、依頼される仕事も作業の範囲にとどまりやすくなります。判断する側に回るための考え方はAI時代の動画編集に必要な思考力にまとめています。
要約力を一人で鍛える練習メニュー
この力は、案件を待たなくても練習できます。素材はいくらでもあるからです。1日20分程度で回せる形にすると、次のようになります。
- 教材を用意する。自分が編集したいジャンルのYouTube動画を1本選び、自動生成の字幕をテキストで書き出します。
- 1分ぶんを区切る。全編ではなく、冒頭1分だけを対象にします。長くやるより毎日やるほうが効きます。
- 13文字で並べる。その1分を、13文字以内のテロップ5〜8本で構成します。全文は書きません。
- 理由を1行ずつ書く。なぜその言葉を残したのかを、テロップごとに1行で添えます。ここを飛ばすと練習になりません。
- 元動画のテロップと比べる。プロが同じ箇所をどう処理したかを見ます。違っていた箇所について、相手の意図を推測して書き足します。
比較対象を実際の動画に置くのがポイントで、自分の作ったものを自分で採点しても基準が育ちません。伸びている動画の編集者が何を残して何を捨てたかを、毎日1分ぶんだけ確認する。この積み重ねが、傍線を引かれたときに手が止まらない状態を作ります。
ただし、この練習だけで単価が上がるわけではありません。要約力は、任される仕事の範囲を広げる材料の一つであって、案件を取る行動や、納期を守る基本的な仕事の進め方と切り離しては機能しません。テスト案件に受かった人が、その後どうなるかは案件ごとに違います。ここは正直に書いておきます。
よくある質問
13文字は業界共通のルールですか
いいえ。これは2023年8月時点で、ある会社のテスト案件で指定されていた文字数として、受講生の近藤さんから僕が聞いたものです。案件によって指定は変わりますし、指定がない案件も多くあります。重要なのは13という数字ではなく、上限が決まった枠の中で取捨選択を求められる、という構造のほうです。
全文テロップの案件では、要約力は不要ですか
全文テロップの案件で、勝手に情報を削るのは指示違反になります。ただし全文テロップでも、改行位置、文字サイズの強弱、強調の入れ方など、どこが幹かを判断する場面は残ります。要約力は、削るためだけの技術ではなく、話の構造を把握する技術として使われます。
AIに要約させてはいけませんか
下書きを出させる用途では有効です。ただし、AIが出した13文字をそのまま使うと、なぜその言葉なのかを説明できない状態になります。この課題で問われていたのは説明のほうなので、AIの案を叩き台にして、自分の基準で選び直し、理由を自分の言葉で書けるところまで持っていくのが現実的な使い方だと僕は考えています。
テスト案件には応募したほうがいいですか
難易度の高いテストは、落ちても得るものがあります。自分の判断がどこで通用しなかったかが、課題という形で残るからです。ただし、無報酬の作業量が過大なものや、提出物が実案件にそのまま使われるような募集には注意してください。テストの範囲と使途を、応募前に確認することをおすすめします。
まとめ
13文字のテロップ試験は、編集ソフトを一度も起動せずに終わる選考課題でした。傍線部から13文字を作り、なぜそれを選んだかをPDFで説明する。2023年8月に受講生から聞いたこの課題に対して、僕は「基礎的な技術の方だけだと本当文字起こしだけになっちゃう人が多い」と言いました。
転記と要約は、同じテロップという工程の中にありながら、必要な力がまったく違います。転記は正確さで測れますが、要約は捨てる判断で測られます。そして捨てる判断には、理由が必要になります。理由を言語化できる編集者は、修正のやり取りが短く、次の判断を任されやすいです。
この力は、案件を待たずに鍛えられます。動画1本の冒頭1分を、13文字以内のテロップ5〜8本で構成し、理由を1行ずつ添えて、元動画と比べる。それだけで、渡された文章の前で手が止まらなくなります。上位5%という評価が僕の体感である以上、そこを目標にする必要はありません。文字起こしで止まらないこと、それが最初の分岐点になります。
免責事項
本記事は、株式会社ブイストが運営する動画編集スクール「ブイプロ」の代表である僕(山田一真)の講義と個別相談の内容をもとに書いています。記載した選考課題の内容は、2023年8月時点で受講生から聞いたものであり、特定の企業の選考基準を示すものではありません。「上位5%」という評価も当時の僕の体感であって、応募者数や合格者数の実測にもとづく割合ではありません。特定の収入・成果・案件獲得を保証するものではありません。
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