動画編集の営業は案件の重さで変える|一斉送信と1社ずつ提案の使い分け
この記事でわかること
- 営業の当たり外れは、文面より先に「送り方」で決まっていること
- 一斉送信が効く案件と、効かなくなる案件の境目
- レベニューシェアのような重い案件を、僕が30社に絞って1社ずつ当てにいくよう指示した理由と手順
- 案件の重さを測る4つの物差しと、週の営業時間の割り振り方
- 提案資料を送る前にやっておくこと
返信が来ないとき、直すべきは文面じゃないことがある
営業がうまくいかないとき、多くの人はまず文面を直します。件名を変える、実績の見せ方を変える、最後の一文を変える。もちろんそれで反応が変わることはあります。ただ、文面をいくら磨いても動かない案件というのが確実にあるんですよ。
それは、送り方そのものが案件と合っていないケースです。動画編集の営業は「営業」というひとことで語られがちですが、中身はまるで違う2種類が混ざっています。数を打って母数で当てにいく営業と、狙いを定めて1社ずつ落としにいく営業。この2つは、使う時間も、準備するものも、送る前にやることも別物です。
ここを混ぜたまま同じやり方で回すと、片方はうまくいって片方はまったく反応がない、という状態になります。そして反応がない側だけを見て「営業が向いていない」と結論を出してしまう。これがけっこうもったいない。
一斉送信が効くのは「相手が決めるのが軽い」案件
制作代行の単発案件や、テロップ・カット中心の編集案件は、一斉送信が効きます。理由は単純で、相手にとっての決断が軽いからです。
発注側から見ると、外注を1人試すというのは、うまくいかなければ次から頼まなければいいだけの話です。社内で稟議を回す必要もないし、既存の座組を崩す必要もない。1本お願いしてみて、納品物を見て判断する。判断のコストが低いので、届いた数のうち一定の割合が返ってくる。だから母数が効くんです。
この領域では、送る数が結果に直結します。1社ずつ丁寧にリサーチして1日3社に送る人より、条件を絞ったリストに毎日30社送る人のほうが、初案件に届くのは早い。ここで時間をかけすぎるほうが遠回りになります。
ただし、数を打つときは事故も起きます。僕は過去に、誤字が入ったままの文面を6,000社に送ってしまったことがあります。数を打つ営業は、1つのミスがそのまま数千件に複製される営業でもある。テンプレートの最終チェックだけは、送信前に必ず人の目で見る。これは数を打つ側の唯一の重い作業だと思ってください。送る文面そのものの型は動画編集の営業文の書き方にテンプレと例文があります。
レベニューシェアは、一斉送信では動かない
一方で、送る数を増やしても手応えが出ない領域があります。レベニューシェア型の提案です。
レベニューシェアは、固定の制作費をもらう形ではなく、成果に応じて報酬の取り分を決める形の契約です。相手の売上や再生数と自分の報酬が連動するぶん、うまくいけば取り分が増える可能性がある一方、成果が出なければ報酬が発生しない設計になることもあります。どちらに転ぶかは案件と契約次第で、やれば増えるという性質のものではありません。
この形が一斉送信で動かないのは、相手にとって決断がまったく軽くないからです。売上を分けるということは、外注を1人試すのとは別次元の話になる。相手の事業の数字に踏み込むし、契約期間も長くなる。テンプレートの文面で「一緒に伸ばしましょう」と送られてきて、はいお願いします、とはならないんですよ。
2023年6月26日の模擬商談で、僕は受講生の大林さんに、レベニューシェアの営業をこう指示しました。
「ここだっていうぶつける先を 30社ぐらいリストアップして」
そのうえで、「僕もレベニューシェアでよくやってたんで」と、自分も同じやり方で取ってきたことを伝えました。母数ではなく、狙いを定めた30社。この数字は「30社しか送ってはいけない」という上限ではなく、1社ずつ中身を作って当てにいくなら現実的にそのくらいの規模になる、という意味で出した数字です。
なぜ重い案件ほど母数が効かなくなるのか
数を打つ営業が効かなくなる理由は、大きく3つあります。
1つ目は、相手の意思決定コストです。金額が大きい、期間が長い、事業の数字に関わる。この3つのどれかが入った瞬間に、相手は「試しに1回」で判断できなくなります。判断が重くなるほど、判断の材料が要る。テンプレートの文面には、その材料が入りません。
2つ目は、こちらの準備コストです。レベニューシェアの提案は、相手のチャンネルや商品を見て、どこに伸びしろがあるかを自分なりに整理して、その前提で取り分の話をすることになります。1社あたりの準備に時間がかかるので、そもそも100社ぶん作れない。作れないものを送ろうとするから、中身が薄いまま数だけ増えて、全部外れるという結果になります。
3つ目は、断られ方が変わることです。軽い案件は「今は足りてます」で終わりますが、重い案件は「なぜこの人と組むのか」が説明できないと、そもそも検討の土俵に乗りません。土俵に乗らない提案は、返信すら来ない。返信が来ないので改善点も分からない。数を打つほど、何も学べないまま時間だけ減っていきます。
だから、数を打つべきではないという話ではないんです。案件の重さによって、効く手が変わるというだけです。
案件の重さを測る4つの物差し
手元の案件がどちらなのかは、次の4つを見れば判断できます。全部を厳密に測る必要はなくて、2つ以上が「重い」側に寄っていたら個別提案に切り替える、くらいの目安で十分です。
| 物差し | 軽い案件(母数で当てる) | 重い案件(1社ずつ当てる) |
|---|---|---|
| 相手の決断 | 担当者レベルで決められる | 売上配分や契約期間の判断が要る |
| 関与の深さ | 渡された素材を編集して納品 | 企画・数字の設計まで関わる |
| 付き合う期間 | 単発〜数本 | 数か月以上の継続が前提 |
| こちらの準備 | テンプレ+実績リンクで送れる | 1社ごとに資料を作る必要がある |
この表で言うと、初案件を取りにいく段階の人はほぼ全部が左側です。左側の案件に対して1社ごとの資料を作り込むのは、時間の使い方としては合っていません。逆に、レベニューシェアや月額のディレクション契約を狙う段階に来ているのに、まだ一斉送信のテンプレだけで戦っていると、いつまでも右側の案件に届きません。
30社の作り方は、除外条件から決める
「ここだっていうぶつける先」を30社選ぶとき、多くの人はまず候補をたくさん集めようとします。順番が逆です。先に外す条件を決めたほうが早く決まります。
- すでに専任の編集チームが入っていそうなところは外す。入り込む余地が小さい
- 投稿が半年以上止まっているところは外す。伸ばす前に、動く体制がない
- 売っている商品や収益の出口が見えないところは外す。分ける売上そのものが特定できない
- 自分が中身を理解できないジャンルは外す。数字の話をする前に会話が続かない
- 連絡先が公開されていないところは外す。最初の接点で詰まる
この5つで削ると、候補はかなり減ります。残ったところに対して、「なぜこの会社なのか」を一文で書けるかどうかを最後に確かめる。書けないところは、まだ調べ切れていないか、そもそも相性が良くないかのどちらかです。ここまでやって残った先が30社くらいになる、という順番になります。
そして送るときは、その一文を提案の最初に置きます。相手からすると、テンプレの一斉送信かどうかは、最初の2行でだいたい分かるんですよ。絞った相手に出す資料の作り方は動画編集の提案資料の作り方で扱っています。
一斉送信をやめる必要はない。二階建てで回す
ここまで読むと、個別提案に全部切り替えたほうが良さそうに見えるかもしれません。でも実際に切り替えると、営業の母数が一気に減って、収入の入り口も細くなります。
現実的なのは、週の営業時間を2つに割る形です。たとえば週に営業へ使える時間が5時間あるとしたら、3時間を数を打つ営業に、2時間を狙い撃ちの30社に配分する。数を打つ側で足元の仕事を確保しながら、狙い撃ち側で単価と関与度の高い案件を仕込む。狙い撃ち側は成果が出るまでの時間が長いので、足元が回っている状態でないと続きません。
配分は状況で変えて構いません。今月の稼働が埋まっていないなら数を打つ側を増やす。埋まっているなら狙い撃ち側を増やす。大事なのは、両方を同じ枠でやらないことです。同じ枠に混ぜると、時間がかかる狙い撃ち側が必ず後回しになります。そもそもどこに送るかの決め方は動画編集の営業先の選び方にまとめています。
提案資料は、送る前に人に見せる
模擬商談の場で僕がもうひとつ指示したのが、提案資料ができたら添削に出すことでした。作って送って終わりではなく、送る前に第三者に見てもらう。
これは重い案件ほど効きます。理由は、重い案件は打席が少ないからです。30社しか当てないということは、外したときのやり直しが効きにくいということでもある。数を打つ営業なら、返信率を見ながら文面を直していけばいいですが、30社に同じ穴のある資料を送ってしまうと、それで一巡してしまいます。
見てもらうポイントは、うまく書けているかどうかではありません。相手の立場で読んだときに、「で、自分に何の得があるのか」が3秒で分かるかどうか。ここが伝わらない資料は、丁寧に作り込んであるほど読まれずに閉じられます。周りに見せられる相手がいないなら、送る予定の30社のうち1社を選んで、その会社の人になったつもりで自分の資料を音読してみるだけでも、抜けはかなり見つかります。
よくある質問
レベニューシェアは初心者でも提案していいですか
提案自体は誰でもできますが、相手の数字に関わる形なので、編集の納品を一度も経験していない段階だと会話が続きにくいです。まずは軽い案件で納品の型を作って、相手のチャンネルや商品の話ができるようになってからのほうが、通る確率は上がります。順番の問題であって、資格の問題ではありません。
30社という数字に根拠はありますか
2023年6月時点の模擬商談で僕が挙げた目安です。1社ずつ中身を作って当てにいくと、現実的に回せる規模がそのくらいになる、という文脈で出した数字で、これ以下でもこれ以上でもいけないという基準ではありません。自分が1社あたりにかけられる時間から逆算して決めてください。
一斉送信の返信率が低いのは、文面が悪いからですか
文面の問題であることもありますが、送り先の条件がずれているケースもかなりあります。文面を変える前に、送り先の条件を1つだけ変えて同じ文面で送ってみると、どちらが原因か切り分けられます。両方を同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。
個別提案は返事が来るまでどれくらいかかりますか
案件によって幅があるので、一律の日数は言えません。ただ、相手の社内で検討が必要な提案は、担当者が持ち帰る時間が入るぶん、単発の編集依頼より時間がかかります。返事が来ないことを前提に、数週間後の追いかけまで最初から予定に入れておくほうが、精神的にも楽です。
提案資料を見せる相手がいない場合はどうすればいいですか
同じジャンルで活動している編集者に相互で見せ合う形が現実的です。それも難しければ、一晩置いてから自分で読み返すだけでも違います。作った直後は、書いてある内容ではなく、書いたつもりの内容を読んでしまうので、時間を空けるのが効きます。
まとめ
営業の手法は、案件の重さで変えます。相手の決断が軽い案件は、数を打って母数で当てにいく。相手の決断が重い案件は、狙いを定めて1社ずつ当てにいく。この2つを同じやり方で処理しようとすると、どちらかが必ず空回りします。
レベニューシェアのように、相手の売上に関わる提案は後者です。2023年6月時点の模擬商談で僕が「ここだっていうぶつける先を 30社ぐらいリストアップして」と指示したのは、母数を捨ててでも1社ごとの中身を作るほうが届く、という判断からです。
やることは3つです。手元の案件が軽いか重いかを4つの物差しで判断する。重いなら、除外条件から30社に絞る。送る前に資料を人に見せる。順番はこれだけです。
免責事項
本記事は、株式会社ブイストが運営する動画編集スクール「ブイプロ」の代表である僕(山田一真)の講義と個別相談の内容をもとに書いています。記載した社数や返信の傾向は当時の商談・指導で出た例であり、特定の収入・成果・案件獲得を保証するものではありません。反応は業種・時期・提案内容によって異なります。
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P.S. 7年前の疲弊する前に欲しかった…
