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低単価案件を100本こなしても編集技術は上がらない理由|作業と提案は別物

公開日: 2026年9月7日 最終更新: 2026年10月18日 執筆: 山田一真(カズマル)|株式会社ブイスト代表
低単価案件を100本 こなしても、 技術は上がらない

はじめまして。この記事を書いた人です

山田一真(カズマル)動画編集スクール「ブイプロ」代表/株式会社ブイスト

  • 2019年12月、報酬500円の動画編集案件から個人で仕事を始める
  • 個人受注から法人・代理店の案件へ広げ、2022年に株式会社ブイストを設立
  • 2025年8月、同社の株式を株式会社エフ・コード(東証グロース・9211)へ譲渡。現在も福岡を拠点に運営を継続
  • 受講生から寄せられた成果報告 延べ555件・実人数380名を自社で集計し、内容を公開している

この記事を書ける理由:この記事は、2023年6月17日に僕が受けた個別相談の内容をもとに書いています。月6〜8本を単価5,000〜6,000円で納品していた方が、「何回もやっていたら編集技術が上がっているのでは」と言った場面で、僕がどう答えたかをそのまま書きます。

この記事でわかること

  • 低単価案件を何本こなしても「提案できる技術」が積み上がらない理由
  • 2023年6月の個別相談で、僕が相談してくれた方の「妄想」をどう否定したか
  • 作業の反復で上がるものと、上がらないものの切り分け
  • 量産型のポートフォリオから抜けるために、何を作り直すのか
  • 本数を追うほど技術に使う時間が消える構造

「数をこなせば、いつの間にか上手くなる」という期待

2023年6月17日に受けた個別相談の話です。相談してくれた方は会社員として働きながら動画編集を副業にしていた人で、当時は月6〜8本を納品し、単価は1本5,000〜6,000円、月の売上は4〜5万円ほどでした。相談の目的は「月10万円を目指すために単価を上げ、作業時間を短縮する。その道筋が正しいか」でした。

話が中盤に差しかかったところで、その方がこう切り出しました。

「5,000とか6,000の案件を何回もやっていたら、いつの間にか編集技術が上がってるんじゃないかっていう妄想があるんですけど」

ご自身で「妄想」と言っているとおり、半分は疑いながらの発言です。ただ、この期待そのものは珍しくありません。それだけの負荷をかけているのだから、その分だけ実力が積み上がっていてほしいと思うのは自然です。稼働時間と上達を、なんとなく同じ線の上に置いてしまうんですよね。

これに対して僕が返したのは、慰めではありませんでした。「また別の話だと思うんですよね」から始まる、はっきりした否定です。

言われた通りの作業と、提案できる技術は別物

否定の中身が、この記事の骨になる部分です。僕が当時言ったのは、こういうことでした。

「その5,000の案件と言われた通りに言われたことをやるよっていうお仕事だと思うんですけど、それとこういったしっかりと創作物というか、テレビ番組レベルに技術を高めていってお客様に提案できる能力っていうのはまたこの延長線上にあるといえば別個のものだと思うので」

ここで僕は能力を二つに分けています。指示されたことを指示された通りに実行する能力と、作品として組み立ててクライアントに提案できる能力。前者を積み上げれば後者になる、という順番になっていません。「延長線上にあるといえば別個のもの」というねじれた言い方をしたのは、そのためです。無関係ではないけれど、同じ坂の上下ではない。

なぜ別物になるのか。低単価の作業案件では、判断のほとんどが発注側にあります。テロップのフォントも色も出すタイミングも、カットの基準も、たいていはマニュアルか過去動画で決まっています。編集者がやっているのは、その決定を正確に再現する作業です。自分で決めていないものは、何本繰り返しても引き出しになりません。100本納品しても、他人の判断の再現が100本分残るだけで、「なぜその判断が正しいのか」を説明する言葉は増えないんです。

提案とは、その説明を先に出す行為です。決めた経験がない人は、決めた理由を語れません。ここが、作業の反復では埋まらない差になります。この差が単価に出る仕組みは動画編集が上手くなっても単価が上がらない理由で書いています。

この話が否定しているのは「反復そのもの」ではない

この見出しを先に置いたのは、結論だけ切り取ると意味が反転するからです。「低単価案件は無駄だからやめろ」という話ではありません。僕が否定しているのは、反復していればいつの間にか別の能力に化ける、という一点だけです。

実際、作業案件の反復で確実に上がるものはあります。上がるものと上がらないものを分けておくとわかりやすいです。

反復で上がりやすいもの 反復では上がりにくいもの
ソフトの操作速度とショートカットの定着 デザインの判断基準(なぜその色・そのサイズか)
書き出しやファイル管理の段取り 構成の設計(どこを見せ、どこを削るか)
納期を守るスケジュール運用 目的から逆算した提案
やり取りや報告の型 ゼロから表現を組み立てる力

左の列は、収入と生活を支えるうえで大事なものばかりです。今受けている案件を全部切れ、という話にはなりません。問題は、左だけが伸びる時間が長く続き、右に手をつけないまま年数が経つことです。この個別相談でも、僕は当時までに300〜400人と個別相談をしてきた経験として「このスクール卒業したけど、この単価で止まってますみたいな声をしぬほど聞いてきた」と伝えました。その原因は「編集ソフトが触れますよっていうスキルしか身についてない方がほとんど」だからです。左の列だけが積み上がった状態のことですね。

量産型のポートフォリオという壁

この個別相談では、実際にポートフォリオを画面共有しながら話を進めました。僕が「量産型ポートフォリオ」と呼んでいるのは、こういうものです。

「ちょっとテロップ入れてみました、カット、BGM、なんか空いてるスペースに画像をポンって貼ってみましたとか、ちょっとキーフレームでなんか画像が少し動きますみたいなもの」

応募してくる編集者のポートフォリオは、当時の僕の感覚で「大体まあ本当に9割ですね」がこの型でした。重要なのは、量産型が下手だという話ではない点です。基礎としては正しく作られています。ただ、同じ型が大量に並ぶので、選ばれる理由が生まれません。

相談してくれた方はこの図を見て、自分の言葉で壁を二つに分け直していました。「0から1へのハードルと量産型からの脱却のハードル」という言い方です。初めて案件を取るまでの壁と、取れるようになったあとで単価帯を移る壁は別物として立っています。低単価案件の反復は前者には有効ですが、後者の前では効き目が落ちます。

このとき僕は野球にたとえました。この比喩で否定したかったのは「去年の自分より上手くなったのだから、そのうち単価も上がるはずだ」という自己比較の発想です。発注は自己比較ではなく応募者どうしの相対で決まる、という話としてこう言いました。「普通のプロ野球選手がたくさん集まってるところに大谷翔平が来たら、それは大谷翔平が輝いて見えるよね」。自分がどれだけ伸びたかではなく、同じ募集に並んだ何十人の中で違いが見えるかどうかが分かれ目になる、という整理です。僕としては「動画編集者で稼ぎたいんだったら動画編集の実力を上げようっていうことを僕は言ってるだけ」なんです。

本数が増えるほど、技術に使う時間が消えていく

ここがこの論点のいちばん厄介なところです。低単価案件は技術を上げないだけでなく、技術を上げる時間を奪います。月6〜8本を納品していたその方に、僕はこう言いました。

「今の5、6000案件で忙殺されて、こういうスキルアップの時間がなかなか取れなくなるバランス調整がすごい大変でして」

働きながら月6〜8本を納品していれば、可処分時間はほとんど残りません。そこに作品を作る時間を足そうとしても、締切のある案件が先に処理されます。その方も「案件優先するよねっていうことで」と受け止めていました。単価が低いほど本数が必要になり、本数が増えるほど技術に投じる時間が消える、という順番で回り続けるんですよね。

獲得経路の問題もありました。その方は当時、案件のほとんどを知人経由で得ていて「ほぼつてが全てというか」という状態でした。これに対して僕が返したのが次の言葉です。

「つてとか縁っていうのでなんとか仕事を獲得している状況から、実力で取るっていうところに行かないと、その長期的に稼げないんですよね」

つてで回っている間は、案件が来ることと実力が上がったことの区別がつきにくいです。仕事が続いていること自体が上達の証拠に見えてしまう。ここでも、稼働と実力を同じ線に置く錯覚が働いています。

時間の作り方は大がかりでなくていいです。本数を減らせるなら減らす。減らせないなら、納品しない作品を作る時間を週の固定枠として先に置く。案件の余りでやろうとすると、余りは出ないので始まりません。営業に手をつけないままだと何が起きるかは動画編集で営業しない人が損する理由で書いています。

単価が上がらないままだと、人に回す道も詰まる

「編集し続けるのがきついなら、ディレクターになって外注すればいい」という発想も、この段階でよく出ます。ただし単価が低いままだと、別の苦しさに移るだけです。

「5000円の案件を2000円もらって3000円で誰かに外注するみたいなことって、相当不毛だと思うんですよね」

理由はこうです。3,000円で受ける編集者を管理することになるため、細かい修正指示の手間がかかり、間に合わなければ自分で巻き取ることになります。手元の2,000円に対して負荷が釣り合いません。単価が上がると任せられる相手の層が変わり、管理コストが下がります。人に渡す設計は、単価が上がったあとに現実的になるんです。単価そのものを動かす手順は動画編集の単価の上げ方にまとめています。

「提案できる技術」に変えるための順序

では、反復では埋まらない側をどう埋めるのか。この個別相談で僕が話した考え方を順に整理します。

  • 再現する対象を、量産型より上に設定する。 僕は当時、目標を「テレビ番組を再現しましたと言えるぐらいのもの」に置いていました。目標物が量産型のままだと、いくら作っても量産型が増えるだけです。
  • 「ゼロから作れるか」を基準にする。 テンプレートやプリセットで似せるのではなく、同じものを自分で組み立て直せるかで判定します。作れるようになる過程で工数が短縮され、スピードも上がります。
  • 言われていないことに応える練習をする。 僕はこれを「模擬案件」という形で説明しました。狙いは次の言葉に表れています。「マニュアルが置いてあって5000円でとりあえず作業をしてくださいという案件ではなくて、クライアントからこんな感じでお願いしますって言われたことに対して、100%満足する形で納品するというもの」。ふわっとした要望を自分で具体化して返す一往復が入るかどうかが分岐点になります。
  • 作ったものを提案の形に載せる。 一本できたら、既存のクライアントに「こういう見せ方もできます」と出し、新規の営業にも使います。ポートフォリオは保管物ではなく、動かして初めて意味を持ちます。

やること自体は、聞けば当たり前のことばかりです。だからこそ当時の僕は、基準の置き方についてこう言いました。「当たり前のことを当たり前じゃないぐらい尋常じゃなくやれるかどうか」。差がつくのは知識ではなく、どこまでやり切るかの水準のほうです。

よくある質問

低単価の案件は、今すぐやめたほうがいいですか

やめる必要はありません。この個別相談でも、案件を止めろとは言っていません。問題は「反復さえしていれば技術が上がる」と考えて、それ以外の時間を作らないことにあります。本数と学習のバランス調整が大変だという点は、僕自身も認めています。

実務経験そのものが無意味ということですか

そうではありません。納期の守り方、報告の型、修正対応の進め方、素材管理の段取りは、案件の中でしか磨かれません。上がらないと僕が言っているのは、デザインの判断や構成の設計、提案の能力のほうです。無意味かどうかではなく、どちらの能力が伸びているかを切り分けて見たほうがいいです。

どのくらいの期間で変わりますか

期間を約束できるものではありません。参考として、2023年6月時点の個別相談で僕は、独学でテレビ番組レベルの制作にたどり着く場合は「7ヶ月から15ヶ月ぐらいかかる人が多い」、自社のマンツーマン指導を受けた場合は「1ヶ月半から3ヶ月ぐらい」でそのクオリティに到達している人が多い、と伝えました。いずれも当時の話であり、開始時点のスキルや確保できる時間によって変わります。

ポートフォリオを作り直せば、単価は上がりますか

上がると約束できるものではありません。この個別相談で僕が話したのは、選ばれるかどうかは応募者どうしの相対で決まり、その比較材料になるのがポートフォリオの質だ、ということです。作り直しは条件を整える行為であって、結果を保証するものではありません。営業の量や提案の内容など、他の変数も同時に効いてきます。

まとめ

2023年6月の個別相談で僕が伝えたことは、一行にすると「言われた通りにやる仕事と、提案できる技術は別個のもの」ということに尽きます。低単価案件を100本こなしても、それは他人の判断を100回再現した記録であって、自分で決めた経験の記録にはなりません。

ただし反復そのものを否定しているわけではありません。操作速度も段取りも納期管理も、案件の中でしか身につきません。上がらないのは判断と提案の側です。両方を同じ線に置くと、忙しさが上達の証拠に見えてしまいます。

やることは、量産型より上の目標物をひとつ決め、テンプレートに頼らずゼロから組み立て、言われていないことに応える練習を挟み、提案に載せる。その時間は案件の余りからは出てきません。先に枠を取るしかないです。

免責事項

本記事は、株式会社ブイストが運営する動画編集スクール「ブイプロ」の代表である僕(山田一真)の講義と個別相談の内容をもとに書いています。記載した単価や本数は当時の個別相談で出た例であり、特定の収入・成果・案件獲得を保証するものではありません。成果は本人の実力・稼働時間・案件の内容によって異なります。

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