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動画編集の営業がメール中心な理由|The Model型を個人に移した話

公開日: 2026年9月15日 最終更新: 2026年10月18日 執筆: 山田一真(カズマル)|株式会社ブイスト代表
営業がメール中心 なのには理由がある

はじめまして。この記事を書いた人です

山田一真(カズマル)動画編集スクール「ブイプロ」代表/株式会社ブイスト

  • 2019年12月、報酬500円の動画編集案件から個人で仕事を始める
  • 個人受注から法人・代理店の案件へ広げ、2022年に株式会社ブイストを設立
  • 2025年8月、同社の株式を株式会社エフ・コード(東証グロース・9211)へ譲渡。現在も福岡を拠点に運営を継続
  • 受講生から寄せられた成果報告 延べ555件・実人数380名を自社で集計し、内容を公開している

この記事を書ける理由:この記事は、僕が営業手段を一通り試したうえでメール中心に落ち着いた理由を、The Model型の分業を個人の営業に移すという観点から書いています。2023年8月の個別相談で実際に話した内容がもとになっています。

この記事でわかること

  • 動画編集者がやっている「メール営業」が、どこから来た型なのか
  • BtoBで広まった『The Model』が前提にしていた、分業という考え方
  • その分業を個人事業主がひとりで兼ねると、何が変わるのか
  • 「営業が苦手」を、工程ごとの詰まりに置き換えて見る方法
  • 企業向けの型を個人に移すときに落ちてしまうものと、僕が考えるその埋め方

動画編集の営業は、なぜメールとZoomの形をしているのか

動画編集の営業と聞いて、多くの人が思い浮かべる形はだいたい決まっています。企業やYouTubeチャンネルを探してメールを送る。返信が来たらZoomで話す。そこで提案して受注する。僕がブイプロで教えている手順も、大枠はこの形です。

ただ、この形は動画編集の業界で自然発生したものではありません。もともとはBtoB、つまり企業が企業に売るときの営業手法として広まったものです。

きっかけは2020年前後のコロナ禍でした。それまでの法人営業は、アポを取って訪問して、名刺を交換して、対面で提案するのが基本でした。それが物理的にできなくなった。代わりに立ち上がったのが、メールで接点をつくり、Zoomで商談して、そのまま受注まで持っていくやり方です。移動時間がゼロになるぶん、一人の営業担当が抱えられる商談の数が増える。この効率の良さが認識されて、コロナが落ち着いたあとも形として残りました。

同じ時期に、メールアドレスのリストを生成・販売する会社も伸びています。僕は2023年8月の個別相談で、リストを提供するだけでなく、送り方やアプローチ方法のコンサルティングまでプランに含めている会社があるという話をしました。つまり「送る先」と「送り方」がセットで商品になるくらい、メール営業が一つの市場として成立していたということです。メール営業の手順は動画編集の法人営業7ステップに分解しています。

『The Model』が言っているのは、分業の話だった

この流れの土台になった本として、僕がいつも名前を挙げているのが『The Model』です。福田康隆氏の著書で、2019年に刊行されました。BtoB営業の組織をどう設計するかを扱った本で、営業の現場で一気に広まりました。

この本の中心にあるのは、テクニックではなく分業の考え方です。営業という一つの塊を、いくつかの工程に割る。ざっくり書くと次のようになります。

  • マーケティング:見込み客のリストを集める工程
  • インサイドセールス:メールや電話で接点をつくり、商談の約束を取る工程
  • フィールドセールス:実際に提案して受注する工程
  • カスタマーサクセス:納品後に成果を出してもらい、取引を続ける工程

ここで大事なのは、なぜ分けたのかという理由のほうです。分けるのは効率化のためだけではありません。営業の結果を「担当者の性格や気合い」の問題として見るのをやめるためです。この否定が先にあると、分業という発想の意味が変わってきます。

一人の営業担当が最初から最後まで抱えていると、成績が悪いときに出てくる説明は「あの人は営業に向いていない」で終わってしまいます。工程を割っておけば、リストの数が足りないのか、送った文面に返信が来ないのか、商談の中身が弱いのか、それとも売ったあとに続かないのかを分けて見られる。人ではなく工程を直せるようにするための分け方だった、ということです。

「それを個人事業主にはめたのが、うちの営業講座」

ここまでは企業の話です。組織があって、工程ごとに担当者を置けるから成立します。動画編集をやっている個人には、部署も担当者もいません。

それでもこの型は移せる、というのが僕の整理です。2023年8月の個別相談で、メール営業の出自をひととおり説明したあと、僕はこう続けました。

「それを個人事業主にはめたのが うちの営業講座だったりするんですよね」

移植するときに変わるのは、担当者の数だけです。工程そのものは消えません。企業では4人で分けていたものを、個人はひとりで順番にかぶり替えることになります。4つの帽子が机の上に並んでいて、時間帯によってどれかをかぶっている状態、と考えるとイメージしやすいと思います。

企業での役割 個人がやること 見る数字
マーケティング 送る先を探して一覧にする リストの件数
インサイドセールス メールを送り、返信に対応する 返信の数、商談になった数
フィールドセールス Zoomで話し、提案して決める 商談から受注に至った数
カスタマーサクセス 納品し、次の相談を受けられる関係を保つ 2本目以降が続いた社数

4つに割ると、詰まっている場所が特定できる

この割り方の実用的な効果は、「営業が苦手」という一言を分解できることです。苦手という言葉のままだと打ち手が出てきませんが、どの工程で止まっているかがわかれば、直す場所は一つに絞れます。

送っているのに返信がまったく来ないなら、疑うのは文面と送り先です。動画に困っていない相手に丁寧な文面を送っても返信は来ませんし、困っている相手に的外れな文面を送っても同じです。ここは前工程のリストづくりまで戻らないと直りません。

返信は来るのに商談にならないなら、返信が来たあとの動きに原因があります。返信から日をまたいでしまう、日程調整でやり取りが増えて温度が下がる、といったところです。ここは文章力の問題ではなく、段取りの問題として扱えます。

商談まで行くのに決まらないなら、話す中身の設計です。相手の課題を聞く前に自分の説明を始めていないか、価格の話に入る前に何を解決するのかが共有できているか。ここは録画を見返すと自分で気づける部分が多い工程です。

受注はできるのに単発で終わるなら、納品後です。納品して終わりにしていないか、次の相談が来る余地を残しているか。企業ではカスタマーサクセスという独立した部署が持っている工程なので、個人がいちばん抜かしやすいところでもあります。

どの工程で止まっているかがわからないまま「もっと頑張る」と決めると、たいてい一番動きやすい工程、つまり送信数を増やす方向に力が入ります。詰まりが商談の中身にあるときに送信数だけ増やしても、断られる回数が増えるだけなんですよね。メール以外の入口は動画編集のYouTube直接営業のやり方で扱っています。

企業の型を個人に移すと、落ちるものがある

そのまま移せない部分もあります。いちばん大きいのは母数です。

企業のメール営業は、数千件のリストに一斉に送ることを前提に設計されています。返信率が数パーセントでも、母数が大きければ商談の数は確保できる。そういう計算の上に成り立っている型です。個人がひとりで送れる数はそこまで届きません。リストを買ったとしても、返信対応と商談を同時に回せる量には限りがあります。

もう一つ落ちるのが、会社名という信用です。相手が知っている企業からのメールと、聞いたことのない個人からのメールでは、開かれ方が違います。ここは仕組みでは埋まりません。

個人がこの2つをどう埋めるかというと、僕の考えでは方向は逆になります。母数を増やす方向ではなく、1通あたりの精度を上げる方向です。相手のチャンネルや事業を実際に見て、何に困っていそうかを1行でも具体的に書けるかどうか。企業が数で解いている問題を、個人は解像度で解くことになります。

リストについても同じです。買ったリストは自分以外も持っている可能性がありますが、自分で見つけた送り先はそうではありません。YouTubeで更新が止まりかけているチャンネル、採用ページはあるのに動画がない企業、といった探し方は、時間はかかりますが自分の目で条件を決められます。企業が外注している工程を自分でやるぶん、送り先の質をコントロールできるという言い方もできます。求人媒体を使う場合の型は動画編集の求人サイトで案件を探す方法にあります。

ひとりで4工程を回すときの組み方

4つの帽子を持っている以上、問題になるのは時間の配分です。僕が受講生を見ていてよくあるのは、納品が忙しい週にリストづくりと送信が完全に止まり、納品が終わった週に送る先がなくて手が止まる、という波です。工程を分けて見ていないと、この波は毎月繰り返します。

対処は単純で、工程ごとに時間を先に取っておくことです。たとえば週の頭にリストづくりだけをまとめてやる、送信は決めた曜日に固めてやる、商談は特定の曜日に寄せる、といった組み方になります。工程を混ぜないほうがいいのは、頭の使い方が違うからです。送り先を探す作業と、商談で相手の話を聞く作業と、編集して納品する作業は、それぞれ別の集中の仕方を要求してきます。1日の中で行き来すると、切り替えのぶんだけ時間が溶けます。

納品が詰まっている時期に営業を完全にゼロにしないことも、工程で考えると理由がはっきりします。今週の送信は来週の返信になり、再来週の商談になり、その先の受注になる。止めた影響が出るのは、止めた週ではなく数週間あとです。忙しさの波と手取りの波が1か月ずれて見えるのは、たいていこの遅れが原因です。

よくある質問

メール営業はもう古いのではないですか

形が広まったぶん、同じような文面が届く相手が増えているのは事実です。ただ、古くなっているのは手段そのものではなく、テンプレートをそのまま送る使い方のほうだと僕は思っています。工程で見れば、返信率が落ちているのは「送る先の選び方」と「文面」の工程であって、メールで接点をつくること自体が成立しなくなったわけではありません。返信が来ないときは、手段を替える前にどちらの工程が原因かを分けてみてください。

リストは買ったほうが早いですか

企業向けにリストを販売している会社は複数あり、送り方のアドバイスまで含めたプランを用意しているところもあります。ただ、購入したリストは条件を自分で細かく決められないことが多く、他の人にも渡っている可能性があります。個人の場合、送れる通数に上限があるぶん、1件あたりの当たりを上げたほうが噛み合いやすい設計です。まずは自分で条件を決めて探し、探す基準が固まってから量を検討する順番が現実的だと思います。

何通くらい送れば返信が来ますか

送り先の選び方と文面によって大きく変わるため、通数だけで見込みを示すことはできません。数字を目安にしたいなら、他人の平均値ではなく自分の実測を使ってください。送った数、返信が来た数、商談になった数を記録しておけば、2〜3週間で自分の数字が出ます。その数字が動いたときに、どの工程を変えたから動いたのかが追える状態にしておくことのほうが、他人の返信率より役に立ちます。

個人でも4つの工程を全部やる必要がありますか

全部を毎週やる必要はありませんが、どれも欠かすと止まります。よく抜けるのは納品後の工程です。納品して終わりにすると、毎回ゼロから送る先を探すことになり、リストづくりの負担が減りません。すでに取引がある相手に次の相談をしてもらえる状態を保つのは、営業の一部として設計されている工程だと考えたほうが回りやすくなります。

Zoom商談が苦手でも進められますか

商談が苦手だと感じている場合も、まず工程を分けてみてください。話すことそのものが苦手なのか、聞く順番が決まっていないから毎回出たとこ勝負になっているのかで、対処が変わります。後者であれば、聞く項目を紙に並べて順番を固定するだけで負荷はかなり下がります。分業の考え方は、こういう「性格の問題に見えるもの」を手順の問題に置き換えるためのものです。

まとめ

動画編集者がやっているメール営業は、コロナ禍のBtoB営業で広まった型が出発点です。その土台にあった『The Model』の考え方は、テクニックではなく、営業を工程に割って人ではなく仕組みを直せるようにする、という設計思想でした。

企業では4人で分けていた工程を、個人はひとりで順番にかぶり替えます。担当者は減りますが、工程は減りません。だからこそ、うまくいかないときに「営業が苦手」で止めずに、リスト・送信・商談・納品後のどこで詰まっているかまで下ろせるかどうかが分かれ目になります。

そして、企業の型をそのまま持ってくると母数と信用が足りません。そこは数ではなく、送り先の選び方と1通の精度で埋めることになります。自分がいまどの帽子をかぶっていて、その工程の数字がどうなっているのか。そこから始めるのが、この型のいちばん実用的な使い方だと僕は思います。

免責事項

本記事は、株式会社ブイストが運営する動画編集スクール「ブイプロ」の代表である僕(山田一真)の講義と個別相談の内容をもとに書いています。記載した営業手段の比較は当時の状況にもとづくものであり、特定の収入・成果・案件獲得を保証するものではありません。有効な手段は時期と対象によって変わります。

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