動画編集を学ぶ順番|編集→営業→ディレクションを飛ばさない理由
この記事でわかること
- 動画編集の学習を「編集 → 営業 → ディレクション」の順に並べる理由
- 各段階で外れる制約が何なのか(作れない・値段を決められない・時間が足りない)
- 2023年6月の個別相談で僕が説明した、外注を挟んだときの取り分の考え方
- 順番を入れ替えた人がつまずきやすい場所と、そこで起きること
- いま自分がどの段階にいるかを判断するための目安
「何を学ぶか」ではなく「どの順で学ぶか」で差がつく
動画編集で長く仕事を続けている人がやっていることは、だいたい三つに分かれます。自分で手を動かして映像を仕上げること。仕事を取ってくること。そして、人に任せて全体を回すこと。この三つは並べてみればどれも当たり前の要素で、目新しさはありません。
それでも結果が分かれるのは、三つのうちどれから手をつけるかが人によってバラバラだからです。編集だけを何年も磨き続ける人がいます。まだ一本も納品していないのに外注先を探し始める人がいます。営業を飛ばして、単価は相手が決めるものだと思ったまま数年過ごす人もいます。学ぶ内容は同じでも、順番が違えば途中で必ずどこかで止まるんです。
ブイプロの設計は、この順番を「編集 → 営業 → ディレクション」で固定しています。理由は単純で、後ろの段階は前の段階が終わっていないと機能しないからです。ここでは、各段階で何の制約が外れるのかという観点で三つを並べ直してみます。第1段階に入る前の学習手順は動画編集の勉強は何から?最初の30日にまとめています。
第1段階:編集|まず「納品できる手」を作る
最初の制約は、そもそも作れないことです。カットが切れない、テロップが打てない、音が整えられない状態では、仕事を取ってきても引き受けられません。だからここは飛ばしようがないです。
ただし、この段階のゴールを「上手くなること」に置くと終わりが来なくなります。上手さには上限がないので、いつまでも「まだ足りない」と感じ続けることになります。置くべきゴールは、相手の指示どおりに、決めた期日までに、直しが少ない状態で出せることです。作品としての完成度ではなく、仕事としての再現性のほうを見ます。
ここで一つ比喩を使いますが、先に何を否定するための比喩かを書いておきます。否定したいのは「腕が上がれば、いつの間にか単価も案件も付いてくる」という期待のほうです。編集の練習は、料理でいえば包丁の扱いを覚えることに近いです。包丁が使えなければ店は開けないので、練習そのものは正しい。でも、包丁の扱いをどれだけ極めても、それだけで店に客が来る仕組みにはなりません。客をどう呼ぶかは別の技術で、そこは第2段階の話になります。
編集の段階で長く足踏みする人に共通しているのは、次の段階に進む合図を持っていないことです。合図はシンプルでいいです。指示どおりのものが期日どおりに出せて、修正が「なんか違う」ではなく具体的な内容で返ってくるようになったら、次に進んでいい時期に入っています。
第2段階:営業|値段を決める側に回る
次に外すべき制約は、値段を自分で決められないことです。編集ができるようになっても、案件が「向こうから提示される単価」でしか入ってこないなら、収入の伸び方は相手の予算次第になります。技術の問題ではなく、どこから仕事が来ているかという商流の問題です。
営業を学ぶというのは、営業文のテンプレートを覚えることではありません。相手が何に困っていて、その困りごとに対して自分の作業がどう効くのかを、相手の言葉で説明できるようにすることです。ここが言えるようになると、単価の話が「安くしてください」「もう少し上げてください」の綱引きではなく、何にいくら払うのかという話に変わります。
そして、この段階を通っていることが、次のディレクションの前提になります。自分で仕事を取れない状態でディレクションだけ覚えても、配る仕事が手元にないからです。人に任せる技術は、任せる仕事があって初めて意味を持ちます。営業を飛ばしてディレクションに行く人が最初に詰まるのはここで、外注先は見つけたのに流す案件がない、という状態になるんですよね。第2段階の具体的な進め方は動画編集の法人営業7ステップで書いています。
第3段階:ディレクション|自分の時間から売上を切り離す
編集ができて、営業もできるようになると、次に当たる壁は自分の時間になります。一本あたりの単価が上がっても、自分が編集している限り、こなせる本数には物理的な上限があります。ここを外すのがディレクションです。
2023年6月19日の個別相談で、僕はこの段階の構造をこう説明しました。
「最終的にはディレクションもしっかり学んで 25,000円の案件を編集者に1万5,000円で依頼して 1万円自分もらって編集しなくて済むみたいな感じにしていく」
この直後に、自分が編集しなくても取引が回るようになると、売上ではなく利益のほうが積み上がっていく、という話を続けました。ここで注意してほしいのは、これが「そういう構造がある」という説明であって、その金額になることを約束したものではないという点です。実際の単価も、外注費も、案件が続くかどうかも、相手と時期によって変わります。数字は構造を示すための一例として受け取ってください。
構造として見るべきなのは、差額そのものではなく、差額が何の対価なのかのほうです。受注した金額と外注費の差は、ただ間に立っただけで発生するものではありません。案件を取ってきたこと、要件を編集者が作業できる形に翻訳したこと、上がってきたものを確認して直しを入れたこと、納期と品質の責任を自分が持っていること。この仕事が抜けると、差額は「中抜き」に見えてしまいますし、実際、確認をしないまま流すと品質が落ちて取引自体が終わります。
もう一つ、比喩の続きになるので先に否定したいことを書きます。三段階を「上の階に上がったら下の階の仕事はしなくてよくなる」と読むのは間違いです。編集を手放すのは自分の手を動かす時間の話であって、判断まで手放すわけではありません。上がってきた映像の何が良くて何が直しなのかを自分で判断できなくなると、外注先の仕事を評価できません。だから編集の目は第3段階でも使い続けます。第3段階の仕事の中身は動画編集ディレクターになるにはで詳しく書いています。
順番を入れ替えると、どこで止まるか
三つの段階は、どれか一つを飛ばしても最初はしばらく進んでしまいます。止まるのは少し先です。よくある入れ替え方と、そこで起きることを整理しておきます。
| 入れ替え方 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 編集だけを磨き続ける | 技術は上がるが、仕事の入り口が増えない。単価は相手の提示額のままになりやすい |
| 編集を飛ばして営業から始める | 受注はできても納品で苦しむ。修正が増え、続かない取引になりやすい |
| 営業を飛ばしてディレクションへ | 任せる相手はいるのに、流す案件がない。結局、自分で編集する状態に戻る |
| 三つを同時に始める | どれも中途半端になり、うまくいかない原因がどこにあるか切り分けられなくなる |
最後の「同時に始める」は、意欲がある人ほど起きやすいです。三つ同時に走らせると、案件が取れないときに、それが営業の問題なのか、見せている実績の問題なのか、そもそも作れていない問題なのか、自分で判断できなくなります。順番に進める利点は、うまくいかないときに原因の置き場所が一箇所に絞れることにもあります。
いま自分がどの段階にいるかを見分ける
段階の判定は、収入額ではなく「何ができていないか」で見たほうが早いです。目安として、次の順で自分に当てはめてみてください。
- 指示どおりのものを期日どおりに出せるか。 ここが怪しいなら第1段階。腕を上げるより先に、決めた期日を守り切る回数を増やす
- 自分から仕事を取りに行った経験があるか。 応募だけ、紹介待ちだけなら第2段階。まだディレクションの本を読む時期ではない
- 単価の根拠を相手に説明できるか。 「相場だから」しか言えないなら第2段階の途中。相手の目的と自分の作業をつなぐ言葉を作る
- 受けたい案件を、時間がないという理由で断ったことがあるか。 ここまで来ていれば第3段階に入る合図になる
最後の項目が重要です。時間が余っている状態でディレクションを始めても、外注費を払った分だけ手取りが減るだけになります。「自分の時間が足りない」という制約が実際に出てきたときが、人に任せる技術を学ぶタイミングです。
ブイプロがカリキュラムを編集から始めて営業を挟み、その先にディレクションを置いているのも同じ理由です。「時間的にも経済的にも自由になるための動画編集」を目標に置くと、経済的な部分は第2段階で、時間的な部分は第3段階で扱うことになります。順番はここから決まっています。
よくある質問
編集はどこまでできれば営業に進んでいいですか
作品として自信が持てるかどうかではなく、指示どおりのものを期日どおりに出せるかで判断するのが現実的です。技術に上限はないので「十分」と感じる日は来ません。逆に、まだ通しで一本仕上げたことがない段階で営業に進むと、受注してから納品で苦しむことになります。通しで仕上げる経験を先に作っておいてください。
ディレクションを先に覚えてはいけないのですか
知識として先に読むことは止めません。ただ、実際に人へ任せる運用は、配る案件と、上がってきたものを判断する目の両方が要ります。どちらも前の段階で作るものなので、運用として始めるなら順番どおりのほうが無駄が少ないです。
外注に出すと、自分の取り分は必ず増えますか
増えるとは言えません。受注額と外注費の差は、案件を取る・要件を伝える・確認して直す・納期と品質の責任を持つという仕事の対価であって、間に立てば自動的に発生するものではありません。確認を省けば品質が落ちて取引自体が続かなくなります。上で挙げた金額も、構造を示すための一例であって、同じ数字になることを示すものではありません。
三つの段階を全部やり切るのにどれくらいかかりますか
人によって差が大きく、一律の期間は出せません。学習に使える時間、案件の入り方、続けられる環境が違えば進み方は変わります。期間で管理するより、前の段階の合図(期日どおりに出せる/自分から仕事を取った経験がある/時間が足りなくなった)が出たかどうかで進むほうが判断しやすいです。
営業が苦手でもディレクションで代替できませんか
代替にはなりにくいです。ディレクションは案件が手元にあることが前提の技術なので、案件の入り口を作る営業を飛ばすと、任せる相手を探す作業だけが残ります。営業が苦手な場合は、飛ばすのではなく、やり方を変える(送る数を減らして相手を絞る、既存の取引先の中で広げる、など)ほうが現実的です。
まとめ
編集・営業・ディレクションは、どれが偉いという話ではなく、外す制約が違うだけです。編集で「作れない」を外し、営業で「値段を決められない」を外し、ディレクションで「自分の時間が上限になる」を外す。前の制約が残ったまま次に進むと、必ずそこに戻されます。
2023年6月の個別相談で僕が説明したのも、差額を取る方法そのものではなく、その差額が成立するまでに何を先に済ませておく必要があるか、という順番の話でした。いま自分が止まっている場所が三つのどこなのかを先に決めれば、次にやることは一つに絞れます。三つ同時に走らせないことが、遠回りに見えて一番早いです。
免責事項
本記事は、株式会社ブイストが運営する動画編集スクール「ブイプロ」の代表である僕(山田一真)の講義と個別相談の内容をもとに書いています。記載した取り分や金額は当時の個別相談で例として話したものであり、特定の収入・成果・案件獲得を保証するものではありません。各段階に要する期間は人によって大きく異なります。
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P.S. 7年前の疲弊する前に欲しかった…
