動画編集に母を救ってもらった話|27歳で会社を売った僕が「毎日8時間寝て」と言う理由

映像制作と動画編集を教える、株式会社ブイストの山田一真(カズマル)です。
28歳です。
先日、福岡の経営者に話を聞くインタビューを受けました。
なんで動画編集を始めたのか。
なんで会社を売ったのか。
母のこと。これからのこと。
聞かれたことに、その場で答えたままを残しておきます。
動画編集を始めたのは、バイトが続かなかったから
そもそも、なんで動画から始めたんですか?
バイトが全くできなかったんです。
鉄鍋の店や居酒屋でバイトしても、最初の3時間で立ちっぱなしがしんどくて飛んでしまう。
テレビ局のバイトをやっても、なかなか人と馴染めない。
でも、お金は必要でした。
YouTubeはよく見ていたので、どうやら動画を編集する人がいるらしいぞ、と。
有名なYouTuberは自分で編集していると思っていたけど、ビジネス系のYouTuberなんかは、編集を外に頼んでいるらしい。
ちょうどコロナが来て、家で働く人がすごく増えた時期でした。
動画編集いいなと思って、YouTuberの裏方として編集を始めた。
それが成長して、今の映像制作の会社になっています。
ご自身もスクールに入って学んだんですか?
教材は買い漁りました。
数千円のものから、数万円、数十万円するものまで。本も買い漁りました。
微妙だったものなんて、ないです。全部が学びでした。
「こうやったら、もっとお客さんが喜ぶのにな」
「こういうことをしてくれたら、もっと嬉しいのにな」
という逆の学びも含めて。
動画編集スクールなんて山ほどある中で、後から始めているので。
先に伸びている人を超えなきゃいけない。
その経験は、完全に生きています。
学生で月60〜70万円稼げていたのに、なんで会社員に?
自分がすごいんじゃなくて、トレンドに乗っただけ、運が良かっただけ。
その実感があったから、自分って張りぼてだなと思っていたんです。
世の中を何も知らない赤子の状態で独立したら、絶対にボロが出る。
当時は学生からフリーランスになるのが流行っていたので、常に逆を行きたい性格もあって、就職しました。
会社員をやってみて、どうでした?
まじで良かったです。
学生に聞かれたら、今でも「就職しなさい」と言うと思うくらい。
新卒で渋谷の会社に入って、3年働きました。
個人では絶対に話せないような大きな企業の担当者さんと話して、企業がどうお金を使って、どんな悩みを持っているのかを全部学べた。
経理も人事も財務も、知りたいと言えば見せてくれる、程よいベンチャーでした。
財務を知りたがる新卒なんて、いないじゃないですか。
知らないことへの恐怖が大きかったんです。
お金を稼ぎたいのに、お金のことも、採用のことも、財務のことも何も分からない。
そのギャップを早く埋めたかった。
バイトも全く歯が立たなかったし、学生生活でも埋もれていた。
劣等感の塊みたいな人間だったので、人に聞かないと成長しないだろうな、という諦めもありました。
最後の1年は、昼は新卒社員、夜は法人1期目の一人社長。
個人事業主の時点で年商が9,800万円あって、会社員から帰った後の数時間でそこまで行けたなら、全部の時間をこっちに使った方がいい。
そう判断して、会社を辞めました。
余命半年と言われた母のこと
早くお金が必要な理由があったんですか?
僕が大学生のときに、母ががんになったんです。
末期がんで、余命半年ですと言われました。
保険が効く治療だけじゃなくて、保険が効かない先進医療も全部やりたかった。
1秒でも長く生きてほしいじゃないですか。
年功序列でゆるやかに給料が上がっていくペースでは、間に合わなかったんです。
学生のときに稼いだお金も家族に使っていたので、手元にはほとんど残っていません。
だから常にハングリーだったし、調子に乗りようがなかった。
お母さんは、今は?
この夏、亡くなりました。
余命半年と言われてから、何年も生きてくれました。
医療費には、何千万円もかけられた。
だから、寿命を延ばしたのは俺だなと思っています。
すごく幸せなお別れでした。
お互いにやれることはやったと分かった上で、お別れできたんです。
親との別れは、誰にでも来ます。
それを、ビジネスの力、お金の力で、こんなに素敵な別れにできるんだと。
本当に良かったと思っています。
いい別れができるかどうかは、家族の努力次第だと思うんです。
人の役に立ちながらお金をもらえて、そのお金で家族を幸せにして、母を笑顔にできた。
仕事って本当に楽しいなと、そこで初めて知りました。
僕は、動画編集に母を救ってもらった。
自分たちの人生を救ってもらった。
だからブイプロは、そこらの動画編集スクールとは違う思いが込められたものになっていると思います。
妹は、大事な10代、20代の時間を、母の介護に使ってくれました。
僕がお金を稼ぐ係で、妹が母の横にいてくれる係。
これからは、自由に生きてほしいと思っています。
「日本一愛のあるスクール」と、審査制のこと
愛が深いですよね。なんでですか?
理由は3つあります。
1つ目は、動画編集を始めたころの原体験です。
母の余命が半年と言われて動転していて、とにかくお金だけを優先した時期がありました。
実力以上の仕事まで取って、納品した動画に不備があって、お客さんに怒られる。
それでも、お金はもらえてしまうんです。
完璧な仕事ができていない、お客さんを満足させきれていない。
その実感があるのにお金がもらえてしまう、心の辛さを知りました。
お客さんが満足した上でもらうお金が、一番嬉しいお金なんだと。
2つ目は、会社を売ってまとまったお金を受け取ったことで、そういうことを余裕を持って言える立場になったこと。
3つ目は、母の教えです。
母は大分の小さなプレハブ小屋を借りて、ひとりでマッサージ屋さんをやっていました。
母子家庭で、女手ひとつで、僕と妹を公立大学に出してくれた。
高校生のころから何度も聞かされていたのが、「愛のある仕事、お客さんが喜んでいる仕事じゃないと意味がない」でした。
この3つがぎゅっと重なって、今の僕ができています。
だからブイプロは、日本一社長が有名なスクールでも、日本一校舎が大きいスクールでもなく、日本一愛のあるスクールを作りますと言っています。
愛は、甘やかすことではありません。
目先の顧客満足じゃなくて、その人が現場に出て疲弊しないように、耳の痛いことでも言う。
耳ざわりのいい「1〜2週間で現場に出られます」ではなく、「卒業まで2〜3か月かかります」「カリキュラムは難しいです」と言う。
最後に喜んでほしいから、言っています。
入会する人とは、どう向き合っているんですか?
無料カウンセリングを通して入ってもらう形ですが、審査制です。
経済的に本当に無理な方に借金をさせて売る、みたいなことが起こらないように、収入の状況や年齢を事前にお聞きしています。
100人来てくれても、今は55%くらいをお断りしています。
売上だけなら、全員に売ればいい。
でも、それでは満足にも成果にもならない。
お金が本当に厳しい状態なら、まずはバイトをした方がいいこともあります。
勉強することや努力することって、僕は贅沢だと思うんです。
世の中には、勉強したくてもできない人がいるので。
上場企業に会社を売ってからは、コンプライアンスも上場企業の水準になりました。
脱毛のPRで「絶対に毛が生えなくなります」と言ってはいけないのと同じで、スクールも「お金を払うだけでこうなります」とは言えません。
グレーなことは一切しない。守る努力は全力でやっています。
AIで、動画編集はどうなっていくと思いますか?
カットやテロップを入れるだけの作業は、AIに飲み込まれていくと思います。
でも、相手のチャンネルをちゃんと理解した上で、出てくる人に合わせて演出やカットの間を考えられる人。
機械的に編集するんじゃなくて、パートナーとして一緒にやれる人なら、「この人に全部任せたい」となるはずです。
結局、ビジネスをするのは人です。
その人が「一緒に歩きたい」と思える人になれるかどうか。
つまり人間力で、突き詰めると愛なんだと思っています。
だからブイプロでは、人を喜ばせるにはどうしたらいいのか、というところまでカリキュラムに入れています。
AIに雑な作業をやらせながら、考えるところは自分でやれる。
そういうクリエイターにとっては、AIはむしろ追い風です。
会社を売った理由と、福岡のこと
なんで会社を売ったんですか?
27歳のとき、会社を上場企業に3億5,000万円で売却しました。
上場企業なので、IRで全部公表されています。
今も代表取締役として残っています。
個人のお金が欲しい気持ちも、もちろんあります。起業家なら誰でも思うことなので。
でも僕はそもそも、代表取締役とか筆頭株主とか、そういう冠に興味がないんです。
自分が創業した会社の業務委託になってもいい。
社長になっても、別にそんなに変わらなかったですし。
冠じゃなくて、その人がどんな生き様か、どんなスタンスでやっているか。
それが背中に宿ると思っています。
会社はもっと大きくなれるのに、僕の脱成長主義のワンマン経営が、成長を止めているという感覚もありました。
スタッフはみんな成長したい。
カズマルとかいう、よく分からない個人がやっている会社に乗ってくれている人たちに報いるには、他の人の資本と意見を入れた方がいい。
それで、この選択になりました。
買ってくれた会社は、最初に声をかけてくれた1社に決めました。
「日本は沈んでいくけど、教育が伸びれば日本はまだ救える」
その考えに筋が通っていたからです。
売却して、僕の稼働はむしろ増えました。
人を集めて、物を動かして、お金を配る。やっていることは変わりません。
受け取ったお金は、28歳の僕の手には余るので、自分では触れないところに置いています。
こんなに偉そうに言えるのも、個人のお金があるからで、なかったら僕ももっとギラギラしたことを言うと思います。
しんどかったことは、ありますか?
毎日しんどいですよ。
売上を伸ばす戦いもそうだし、人にサービスを提供する中での摩擦も山ほどあります。
スクールをやっていると、めっちゃ伸びる人もいれば、伸ばしきれない子もいる。
全員に成果を出してほしいんです。
塾が全員を受からせたいのと同じで。でも、全員はめっちゃ難しい。
それで苦悩する日もあります。
ビジネスは「苦しみ代行」だと思っているので、苦しみまくっています。
それでも、淡々と、毎日60点でいいよね、という感じでやっています。
福岡に来て、どうでした?
福岡に来たのは3〜4年前です。
地元は大分なんですけど、大分だとさすがに田舎すぎる。
ビジネスとして戦えて、今伸びていて、素敵な場所はどこだろうと考えて、福岡にしました。
来てみたら、うれしい悲鳴ばっかりでした。
家賃が安い。
1時間車を走らせれば山があって、15分歩けば海がある。ご飯がおいしい。
東京の人も、なんだかんだ福岡に来るので、会いたい人にはそのとき会えばいい。
北九州で大学生をしていたころの友達とも、会えるようになりました。
東京で、しのぎを削るような生活をしていたころより、幸福度がかなり上がった。
幸福度が上がると、それがサービスにも出るんですよね。
業績も、福岡に来てからの方が伸びた気がします。
本音を言うと、福岡はこのままバズらないでほしいです。独り占めしたいので。
でもそれは個人的な欲で、もっと伸びるべきだし、もっと知られるべき場所だと思っています。
創業を応援する仕組みも整っているし、起業する場所としてこれ以上ない。
僕はたぶん、九州に骨を埋めます。
これからのことと、本当の「ぶち上げ」
これから目指したいことは?
今は、スタッフの成長です。
スタッフ一人ひとりが満足して、会社を乗りこなして成長してもらうことが、目下の目標です。
もっと長い目で見ると、家族に勧められるような老舗にしたい。
子どもが親に「この塾に通うわ」「空手を習うわ」と言ったら、「いいね」ってなるじゃないですか。
オンラインで学ぶスキルも、そうやって家族に誇れるものになったらいいなと思っています。
新しいものだからこそ、まだ怪しく見られることもあります。
業界が成熟していく中で、お客さんの信頼を裏切らずに、長く細くやっていきたい。
教え方の形は、AIや世の中の変化でこれからも変わると思います。
でも、教育という仕事には、一生関わっていくつもりです。
いつか福岡市長に表彰されてみたいですし、どんたくにも出たいですね。
役に立つものや便利なものの価値は、AIでどんどん薄くなっていく。
時間をかけて積み上げてきた歴史は、AIには作れません。
創業した会社を今の10倍、20倍に育てて、オンラインスクールが市民権を得て、家族にも自信を持って「ここを受けるよ」と言われる場所に。
それを、福岡の地でやりたいと思っています。
これから挑戦する人に、メッセージをお願いします
毎日8時間寝て、おいしいご飯を食べて、自分のできる範囲の全力でやる。
それ以外のことはやらない。
それがぶち上げだと思うんです。
ぶち上げと聞くと、眠い目をこすってハードワークするイメージになると思うんですけど。
睡眠を削ることがぶち上げじゃないし、今日10何時間働いたこともぶち上げじゃない。
4時間でも、生み出した価値が大きければ、それでぶち上がっているんです。
母は、子どものために睡眠を削って、体を酷使しすぎて、60歳で亡くなりました。
平均寿命が90歳近くあるこの国で、30年も早く亡くなるには、相当な自己犠牲がいる。
早く亡くなると、家族は泣きます。
僕は、残された側なので。
そういう母の背中を見てきたから、僕は絶対に長生きしたい。
そして、母からもらった愛を、スタッフや受講生にもっと伝えていきたい。
この人生は、そう使います。
みんなで長生きして、みんなで笑顔になって、みんなでたくさん納税して恩返しする。
そのための手段としてビジネスがあったら、それが本質的なぶち上げだと思っています。
カズマル
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P.S. 7年前の疲弊する前に欲しかった…
