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AIで動画編集は全自動化できる?できる工程とできない工程

公開日: 2026年9月1日 最終更新: 2026年9月12日 執筆: 山田一真(カズマル)|株式会社ブイスト代表
全自動化できる工程と、 できない工程

はじめまして。この記事を書いた人です

山田一真(カズマル)動画編集スクール「ブイプロ」代表/株式会社ブイスト

  • 2019年12月、報酬500円の動画編集案件から個人で仕事を始める
  • 個人受注から法人・代理店の案件へ広げ、2022年に株式会社ブイストを設立
  • 2025年8月、同社の株式を株式会社エフ・コード(東証グロース・9211)へ譲渡。現在も福岡を拠点に運営を継続
  • 受講生から寄せられた成果報告 延べ555件・実人数380名を自社で集計し、内容を公開している

この記事を書ける理由:AIの検証と実装に時間もお金も一番突っ込んできた側の人間として、あえて「全自動は無理」と書きます。自分でカットとテロップの自動化を組んで案件で回し、どこがどう崩れるかを毎回自分の目で見てきたからです。

結論から書きます。「動画編集をAIで全自動化できる」は、今のところ現実的ではありません。AIが担えるのは素材の下ごしらえまでで、この間は残すのか削るのか、この言い直しは使うのか、そもそも誰に向けた動画なのか——という判断は人間に残ります。この記事では、全自動を謳う情報の何が誇張なのかを、工程ごとに分解して検証します。

この記事でわかること

  • AIで本当に自動化できている工程と、まだできていない工程の線引き
  • 「全自動」を謳う宣伝文句が、現場では実際に何を指しているのか
  • AIが原理的に判断できない3つのこと(間・言い直し・視聴者)
  • 案件ごとに正解が違うため、全自動の設定が成立しない理由
  • AI動画編集ツールに対して持つべき、正しい期待値の目安

前提:これはAI否定の記事ではありません

最初にはっきりさせておきます。この記事は「AIは使えない」という話ではありません。むしろ逆で、動画編集にAIを使うのはもう当たり前になりつつあって、使わない選択肢のほうが不利です。僕(ブイプロ/株式会社ブイスト代表・山田一真)も、AIツールの検証と実装に相当な時間とお金を投じたうえで、編集現場へのAI導入を勧めている側です。

そのうえで、セミナーでははっきりこう言っています。

「全自動は難しいので、半自動させる仕組みです。『全自動化できます』みたいな文言を見たら、無理なので、そこは騙されない方がいいと思います。というか、全自動化してもうまくいかないので、半自動化するのがいい」

AIに一番お金を突っ込んでいる人間が、AIの全自動化に一番慎重。この記事のテーマは、そのねじれの中身です。批判の対象は特定のツールでも発信者でもなく、「全自動」という言葉の使われ方のほうです。

誠実に認める:AIで本当に自動化できている部分

誇張を検証する前に、自動化が効いている領域を先に認めます。ここを曖昧にすると、ただの懐疑論になってしまうので。

動画編集の仕事は、大きく「営業/進行管理/編集/品質チェック/追加提案」の5工程に分解できます(詳しくはAIで自動化できる動画編集の5工程で解説しています)。このうち、AIに任せて実務上ほぼ問題がない工程は確かにあります。

工程 自動化の実力 なぜ任せてよいのか
案件のリサーチ・営業文の下書き ほぼ自動化できる 募集要項というテキストを読んで条件で選別する作業であり、正解が外部に明示されている。人間は「応募するかどうか」だけ決めればよい
進行管理・タスク表の更新 ほぼ自動化できる 手を動かしても品質が上がらない事務作業。ルールが固定されているため機械のほうが安定する
誤字脱字チェック ほぼ自動化できる 辞書と文脈で機械的に判定できる。人間は体調やその日の集中力で見落とすが、AIは条件が一定
1フレームのズレ・オフライン検出 ほぼ自動化できる 数値の不一致を探す作業。目視より確実で、しかも速い
文字起こし・テロップの一次流し込み 大部分を自動化できる 音声を文字にする精度は実用水準に達しており、デザイン適用前の「素の文字」を並べる工程は機械のほうが速い
無音部分の一次カット 下ごしらえまで自動化できる 波形上の無音は数値で検出できる。ただし「切っていい無音か」の判断は別問題(後述)

要は、料理でいう下ごしらえはAIがやってくれるということです。野菜の皮を剥いて、ざっと刻むところまでは機械が担当する。ここは素直に認めるべき進歩で、「AIはまだ実務では使えない」という主張のほうが、いまや事実と合っていません。

では何が誇張なのか:宣伝文句と実態の対比

問題は、この「下ごしらえができる」が、「料理が完成する」にすり替わって流通していることです。同じ機能を説明していても、言葉の選び方ひとつで受け手の期待値が変わってしまう。

よく見る宣伝文句 実際に起きていること 省略されている工程
ワンクリックで動画が完成 無音カットとテロップの一次流し込みが完了する 間の調整、言い直しの取捨、テロップの改行と強調、デザイン適用、SE、画角、書き出し前の確認
AIが全部やるので編集スキル不要 AIに何をさせるかを指示できる人だけが成果を出している そもそもの指示内容を決める判断。自分にできない作業はAIにも指示できない
編集時間が数分になる 単純作業の時間が圧縮される 圧縮した時間を品質に再投資する工程。作業が消えたのではなく、配分が変わっただけ
誰でも同じ結果が出る 案件ごとにルールを設定した人だけが同じ結果を出せる ジャンル別・クライアント別のチューニング
納品までノータッチ 納品前の人間チェックは全案件で必要 最終責任の所在。クライアントは編集者に発注しており、ツールに発注していない

誇張の正体はシンプルです。「工程の一部の自動化」を「工程全体の自動化」と言い換えているだけ。嘘をついているわけではないぶん、初心者ほど見抜けません。だから「全自動」という単語を見た瞬間に、どの工程の話なのかを分解して確認する癖をつけてほしい。

この点はセミナーでも言いました。Xで広まる完全自動化ノウハウの9割は、なかなか現場で使えません。理由も単純で、クライアントワークの経験がないまま、受注から納品までの文脈を抜きにして語られているケースが多いからです。自分の動画を自分で作るぶんには全自動でも困らないんですよね。困るのは、他人からお金をもらって納品するときです。

この記事の核:AIが原理的に判断できない3つのこと

ここが本題です。「今のAIは性能が足りない」という話ではありません。判断の材料が動画ファイルの中に存在しないから、原理的に決められない、という話です。性能が上がっても、材料がないものは決まりません。

1. この間(ま)は、意味のある間なのか

無音は波形で検出できます。でも「言葉に詰まった無音」と「聞き手に考えさせるために置いた無音」は、波形上ではまったく同じです。前者は削るべきで、後者は削ると台無しになる。両者を区別する情報は音声データの中になくて、話の内容と意図の側にあります。

だから僕は、無音カットを実行したうえで「ここは間を残しておこう、ここは逆に伸ばそう、ここはもっと削ろう、そういう判断を人間がしてほしい」と言っています。自動カットの設計思想も同じで、「絶対にカットするなというところだけ切った上で、人間が後でやる」——誤爆しない範囲だけ機械に任せて、残りは人間、という順序です。全部切ってから戻すのではなく、確実な部分だけ切って残りを仕上げる。この順序の違いが、そのまま品質の差になります。

2. この言い直しは、残すべきなのか

話者が同じ内容を2回言ったとき、機械は「重複だから片方を削る」と処理できます。でも現場では、1回目のほうが熱量が高い、2回目のほうが言い回しが正確、言い直しそのものが人柄として効いている——というケースがあって、どれを残すかは動画の狙いによって変わります。正解が動画の外(企画意図)にあるので、素材だけを見ているAIには決められません。

3. この動画は、誰が見るのか

最も根本的なのがこれです。視聴者像は動画ファイルに書かれていません。同じ素材でも、視聴者が20代のスマホ視聴者なのか、社内研修で見る役員なのか、購入直前の見込み客なのかで、テンポもテロップ量も強調の位置も変わる。人間はヒアリングとチャネルの知識からこれを推測しますが、AIは教えられない限り知りようがないんです。

判断が必要な場面 AIが持っている情報 足りない情報(=人間が補う部分)
この無音を切るか 波形の長さ、前後の発話 その間に演出上の意味があるかどうか
この言い直しを残すか 文字列が重複していること どちらの言い方が動画の狙いに合うか
テロップをどこで強調するか 文の区切り、頻出語 視聴者が引っかかる・離脱するポイント
どの挿入画像を使うか テロップの文言 クライアントのブランドトーンと世界観
テンポを速くするか落とすか 平均発話速度 視聴環境(スマホ/会議室)と視聴者の予備知識
この修正指示を受けるか押し返すか クライアントとの関係と、動画の目的への影響

この表の右列こそが、編集者の仕事の中身です。逆にいえば、右列を持っていない人が全自動ツールを使っても、右列は埋まりません。動画編集3.0で書いたとおり、これからの編集者の価値は作業量ではなくこの判断の側に寄っていきます。

「案件ごとに正解が違う」から、全自動の設定は決められない

もうひとつ、全自動が成立しない実務的な理由があります。切ってよい無音の長さが、案件によって違うんですよね。

ビジネス系の解説動画なら0.3秒の無音でも詰めたほうがテンポが出ます。一方、複数人が会話するエンタメ系で0.3秒を機械的に詰めると、会話が不自然に噛み合って気持ち悪くなる。この場合は1秒、3秒、5秒といった明らかに不要な間だけを対象にします。医療系やクリニックの案件なら、また別の基準です。つまり「全自動」の前提である「全案件共通の正解」が、そもそも存在しない

ブイプロ受講生から寄せられている成果報告(555件)で、受注した案件の種類を集計すると、この多様さが数字で見えます。

案件の種類 件数(延べ・複数選択可)
YouTube長尺動画 287
YouTubeショート 181
その他 155
Instagramリール 129
TikTok 103
サムネイル制作 79
広告動画 77
ディレクション・運用代行 65
企業PR動画 48
セミナー・ウェビナー動画 45
LP用動画 15

※ブイプロ受講生の成果報告フォーム555件の集計(2026年7月時点)。複数選択可のため延べ件数です。

長尺、ショート、リール、広告、企業PR、セミナー——これだけ形式が散らばっていたら、最適なカット基準も、テロップ量も、テンポも当然違います。「全自動」を名乗るには、この全部に同じ設定で通用しないといけない。現実にはそうならないので、案件ごとにルールを与える人間が必要になる。そしてルールを与えられるのは、その形式の動画を自分で作れる人だけです。

正しい期待値の表

誇張に振り回されないために、工程ごとの期待値を先に持っておくと判断が速くなります。目安として整理しました。

工程 AIに期待してよい水準 人間に必ず残るもの
営業・案件リサーチ 候補の収集と選別、営業文の下書きまで 受ける案件かどうかの最終判断と送信
進行管理 ほぼ任せてよい 納期の約束そのもの
カット 誤爆しない範囲の一次カットまで 間の設計、言い直しの取捨、テンポ
テロップ 文字起こしと一次流し込みまで 改行位置、強調、意訳、デザイン適用
画像・SE・画角 候補の生成と挿入の高速化 ブランドに合うかどうかの選択
品質チェック 誤字脱字・フレームずれはほぼ任せてよい 「この動画は面白いか」の判断
クライアントへの提案 案出しの補助まで 提案そのもの(自動化しないほうがよい領域)

2026年時点での僕の実感はこうです。「AIは全体の作業のうち6割ほどは自動でいける。でもそのまま出すとクオリティ的にダメ。カットは間が微妙、テロップも微妙で、大事なところはAIではできない」。6割という数字は、裏を返せば残り4割が丸ごと人間に残るということでもあります。この4割を「まだ自動化されていない部分」と見るか、「編集者が対価を受け取る部分」と見るか。ここでAIとの付き合い方が変わります。

全自動を信じた先に起きること

ブイプロでは2026年に、自社のAI発信そのものを見直しました。事業部長から「AIを使ってワンクリックで全部終わりました、という発信が増えている」と直言されて、僕もそれを認めています。実害もはっきり出ていて、「1秒で動画が作れると聞いてきました」という前提の人が集まり、入会前の面談でお断りする件数が増えたんです。

ここで起きているのは、ツールの問題ではありません。期待値が壊れると、学習の順序まで壊れるという問題です。「AIがやるからスキルは要らない」と信じた人は、そもそもAIに指示が出せない。自分にできないことをAIにさせるように指示することは無理です。カットの基準を言語化できない人は、カットを自動化するプログラムも作れません。

これ、AIの話に見えて実は昔から同じでした。僕は以前、まったく指示書が読めない編集者に出くわして「はぁ?」と怒りが湧いたことがあります。でも指示書のどこが悪いのか考えて書き直したら、途端に修正がほぼ無くなった。結局、僕が悪かったんです。相手が人でもAIでも、自分の頭の中が言語化できていなければ、返ってくるものは同じように的外れになる。もう一点、「他人が作った自動化を受け取るだけでは、AIは1mmも学べない」。自分の業務を洗い出し、どのツールが使えるかを考え、実際に組む。この順番を踏んだ人だけが、案件ごとのチューニングという、全自動では届かない領域に入れます。

結局、AIをどう使えばいいのか

整理すると、やることは3つです。

  1. お金にならない工程から自動化する。進行管理、リサーチ、誤字脱字チェック。どれだけ丁寧にやっても品質が上がらない領域です。
  2. 編集は「下ごしらえだけ」自動化する。無音の一次カット、テロップの一次流し込みまで。誤爆しない範囲に限定して、判断は自分に残す。
  3. 浮いた時間を判断の質に使う。間の設計、テロップの意図、視聴者への最適化。ここが評価され、依頼が続く理由になります。

AIの将来性そのものについては動画編集はAIに奪われるのかで詳しく扱っています。この記事はあくまで「いま流通している全自動という言葉の検証」に絞りました。

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よくある質問

Q1. 将来的には動画編集も全自動になりますか?

作業の自動化はさらに進みます。ただし本記事で挙げた3つの判断(間の意味・言い直しの取捨・視聴者像)は、動画素材の中に答えが存在しないため、性能向上だけでは解決しません。クライアントが「誰にどう届けたいか」を伝え、それを解釈して形にする役割は残ります。将来像については動画編集はAIに奪われるのかをご覧ください。

Q2. AI動画編集ツールは買うべきですか?

買うかどうかより、どの工程を任せるつもりかを先に決める。順番はこっちです。進行管理や誤字チェックのように「任せて損がない工程」があるなら投資対効果は出ます。逆に「編集そのものを代わりにやってほしい」という動機で選ぶと、期待とのズレが大きくなります。特定ツールへの一点賭けも避けたほうが無難で、プロンプト設計のように、どのツールでも通用する概念を先に身につけたほうが長持ちします。

Q3. 初心者はAIから入っていいですか?

AIを触ること自体は早いほうがいいです。ただし編集の基礎と並行してという条件がつきます。理由は単純で、自分ができない作業はAIに指示できないからです。カットの良し悪しが分からない人は、自動カットの結果が良いのか悪いのかも判断できません。順序としては、基礎を学びながら、単純作業だけをAIに逃がしていくのが現実的です。

Q4. AIで下ごしらえした動画を、そのまま納品してはいけませんか?

おすすめしません。クライアントは編集者個人に発注しているのであって、ツールの出力に対して発注しているわけではないからです。僕も「AIでできることを自分がやったと言ってお金を取るのは違う」とずっと言っています。時短で浮いた時間を品質に回して初めて、AIを使う意味が出ます。

Q5. 「全自動」を謳う情報かどうか、どう見分ければいいですか?

3つ確認してください。(1)どの工程の話なのかが明示されているか。(2)クライアントワーク(受注〜納品)の文脈で語られているか、それとも自分の動画を自分で作る文脈か。(3)人間が確認する工程が残されているか。この3つが曖昧なまま「全自動」「ワンクリック」という語だけが強調されている場合は、いったん距離を置いて内容を分解してみることをおすすめします。

まとめ

AIは動画編集の下ごしらえを本当に速くしました。そこは誇張ではなく事実です。一方で、間・言い直し・視聴者という3つの判断は、素材の中に答えがないため人間に残る。そして案件の形式がこれだけ多様である以上、全案件に共通する自動設定も存在しません。

「全自動化できます」という文言を見たら、まずどの工程の話かを分解する。それだけで、期待値のズレによる遠回りはかなり防げます。AIは主役ではなくサポーターとして使う。これが、現場で機能している付き合い方です。

※本記事は動画編集におけるAI活用の考え方を解説したものであり、特定の成果や収入を保証するものではありません。記載の数値はブイプロ受講生からの自己申告に基づく集計であり、成果には個人差があります。ツールの仕様や性能は時期により変動します。

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